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Sixteen Tons
- 作曲: TRAVIS MERLE

Sixteen Tons - 楽譜サンプル
Sixteen Tons|歌詞の意味と歴史
基本情報
Merle Travis(メル・トラヴィス)作によるカントリー/フォークの名曲「Sixteen Tons」は、労働歌として知られるポピュラー・ソング。初出は1946年の録音で、1955年にテネシー・アーニー・フォードのカバーが全米および英国のチャートで首位を獲得し、世界的に普及した。タイトルどおり炭鉱現場の苛酷さを描き、重心の低いビートと低声の歌唱が印象的な作品である。
歌詞のテーマと意味
歌詞は、炭鉱労働者がいくら働いても借金が膨らみ、会社の購買所に生活を縛られる構図を告発する。筋骨たくましい男の誇りと、逃れられない搾取の現実が同居し、リフレインは徒労感と皮肉を帯びる。個人の物語でありながら、賃金労働と負債の連鎖、労働の価値と人間の尊厳という普遍的テーマを提示し、多くのリスナーに時代を超えて共感を呼んできた。
歴史的背景
20世紀前半の米国アパラチア炭鉱地帯では、企業が住宅や購買所を支配する“カンパニー・タウン”が存在し、社用通貨での支払いが一般的だった。トラヴィスはケンタッキー州出身で、炭鉱で働いた父親の体験をもとに曲を執筆。戦後の労働運動の高まりや大衆音楽における社会性の増大とも響き合い、単なる娯楽曲を超えた社会的リアリズムを獲得した。
有名な演奏・映画での使用
決定版として語られるのはテネシー・アーニー・フォード版(1955)。軽快な伴奏と低音ヴォーカルにより、重い主題とポップな感触を両立させて大ヒットした。作者メル・トラヴィスのオリジナル録音も素朴な魅力で評価が高く、のちにジョニー・キャッシュほか多数のアーティストが取り上げてスタンダード化。映画での顕著な使用作品は情報不明。
現代における評価と影響
労働者の視点を正面から描いたポピュラー・ソングとして、プロテスト/ルーツ音楽の古典に位置づけられる。低域主体のグルーヴとコール&レスポンス的な構造は歌いやすさと記憶性を生み、カントリーからロック、アメリカーナまで幅広いジャンルに影響を与えた。社会的テーマを歌に落とし込む手本として、研究・演奏ともに参照され続けている。
まとめ
Sixteen Tonsは、記憶に残るフックで労働と負債の現実を凝縮した名曲である。メル・トラヴィスの筆致と、フォード版の普及力が相まって時代を超えるスタンダードとなった。背景を知ることで、古いヒット以上に、普遍的な社会批評歌としての価値がいっそう明確になる。