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The Third Man Theme (第三の男)
- 作曲: KARAS ANTON,CARR MICHAEL

The Third Man Theme (第三の男) - 楽譜サンプル
The Third Man Theme (第三の男)|作品の特徴と歴史
基本情報
1949年の英国映画「第三の男」の主題として知られる器楽曲。作曲はツィター奏者アントン・カラス。出版・クレジット上でマイケル・カーの名が併記される版もある。別名「ハリー・ライムのテーマ」。ツィター独奏を前面に据え、映画の陰影とウィーンの空気を象徴する代表的モチーフである。
音楽的特徴と表現
音色の要はツィターのきらめくトレモロと歯切れよい分散和音。素朴な旋律に執拗なオスティナートが絡み、軽快さと翳りが同居する。舞曲風のリズム感が街の喧噪を、突然の減衰や間合いがサスペンスを暗示。大編成よりもソロまたは小アンサンブルでの演奏が親しまれ、ギターやオーケストラ編も多い。
歴史的背景
戦後直後のウィーンを舞台にした映画は、占領下の都市、闇市場、失踪事件を描き出した。監督キャロル・リードは当地で演奏していたアントン・カラスに出会い、その素朴で鋭い音色を全編に起用。大型スタジオ的なスコアではなく、ひとつの楽器で世界観を統一する手法が当時として斬新だった。
使用された映画・舞台(該当時)
本曲はオープニングから終幕まで繰り返し用いられ、特にオーソン・ウェルズ演じるハリー・ライムの登場や追跡場面で強い印象を残す。ジョゼフ・コットン、アリダ・ヴァリらが出演し、陰影の濃い映像とともに主題の旋律が観客の記憶に焼き付いた。舞台使用については情報不明。
現代における評価と影響
公開以降、シングルとしても広く普及し、国際的な知名度を獲得。ツィターという楽器の再評価を促し、映画音楽における「少数編成での強い記名性」という設計思想の先駆例としてしばしば言及される。今日でも各種メディアで引用され、異なる編成による録音が継続的に発表されている。
まとめ
The Third Man Themeは、一本のツィターがフィルム全体の語り口を規定し得ることを示した稀有な成功例である。物語の機微と都市の空気を同時に描写するこの主題は、映画音楽の文脈で不朽の地位を保ち、演奏・鑑賞の双方で新たな解釈の余地を残し続けている。