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I'm Henry VIII I Am (ヘンリー八世君)
- 作曲: MURRAY FRED

I'm Henry VIII I Am (ヘンリー八世君) - 楽譜サンプル
「I'm Henry VIII I Am (ヘンリー八世君)|歌詞の意味と歴史」
基本情報
1910年の英国ミュージック・ホールで生まれた軽妙なナンバー。作曲はFred Murray、作詞はR. P. Weston。原題は“I'm Henery the Eighth, I Am”と綴られることでも知られる。のちにポップスとして再解釈され、タイトル表記は“Henry”が一般化。ユーモアと口上調の語りが核にある大衆歌である。
歌詞のテーマと意味
歌詞は、語り手が未亡人と結婚したところ、彼女の過去の夫がみなヘンリーという名で、自分は“八代目”という洒落を効かせた筋立て。畳みかけるリフレインと観客とのコール&レスポンスを想定した構成が特徴で、同じ節を繰り返すことで笑いを高める仕掛けがある。1965年のロック版でもこの構図は踏襲され、テンポの速さが滑稽味を増幅した。
歴史的背景
当時のロンドンでは、機知と早口の“パター・ソング”が人気で、本曲もその系譜に位置づけられる。ヘンリー八世という歴史上の王名を題材にしつつ、内容は宮廷史ではなく名前の偶然性を笑う大衆的ユーモア。ハリー・チャンピオンらが劇場で披露し、歓声と合唱を誘う“参加型”の芸能文脈で育まれた。
有名な演奏・映画での使用
初期の代表的な歌唱としてHarry Championが知られ、録音や舞台で広まった。最も有名な再評価はHerman's Hermitsの1965年版で、ロック・ビートに乗せた短尺シングルとして米国ビルボードHot 100で1位を獲得。古典を60年代ポップ感覚に置き換え、大衆ヒットへと結晶させた。映画での印象的な使用例は情報不明。
現代における評価と影響
現在、本曲はミュージック・ホールの遺産がロック期へ橋渡しされた好例として評価される。英語圏のポピュラー文化でしばしば参照され、ノヴェルティ・ソングの定番として再録・再演の機会も多い。繰り返しの構造は観客参加型の演出と相性がよく、音楽史の概説やポピュラー音楽研究でも取り上げられることがある。
まとめ
ユーモア、簡潔なメロディ、反復の効用という三要素が、劇場からポップ・チャートまで貫通した稀有な一曲。原典の機知と1965年版の勢い、どちらから入っても本質は同じで、聴衆と一体になる快感にある。史実を語る歌ではなく、言葉遊びの妙を楽しむ小気味よい大衆歌として今も息づいている。