Enter The Dragon (燃えよドラゴン)
- 作曲: SCHIFRIN LALO

Enter The Dragon (燃えよドラゴン) - 楽譜サンプル
Enter The Dragon (燃えよドラゴン)|作品の特徴と歴史
基本情報
「Enter The Dragon (燃えよドラゴン)」は、1973年公開の同名映画にためにラロ・シフリンが作曲した主題曲・スコアの中核をなす楽曲。映画の冒頭や重要場面で繰り返し用いられるモチーフとして機能し、作品全体の緊張感とスタイルを決定づけた。録音はオリジナル・サウンドトラック音源としてまとめられ、映画音楽ファンの間で長年参照されている。歌詞は存在せず、主としてインストゥルメンタルで構成される。編成はオーケストラにリズム・セクションやブラスを加えたハイブリッドで、当時の映画音楽の中でも特に都会的でモダンな響きを志向している点が特徴だ。
音楽的特徴と表現
楽曲の核は、低音域のオスティナートと切れ味のあるブラス・リフ、ワウ・ペダルを用いたギターが生むファンク由来のグルーヴにある。4/4拍子を基軸としたタイトなビートの上で、ストリングスが緊張を煽るサスティンやユニゾンのフレーズを重ね、金管のアクセントがアクションの動勢を強調する。旋法的にはペンタトニックを想起させるモチーフが用いられ、簡潔な主題を場面に応じてテンポやオーケストレーションで変奏することで、潜入、対決、追跡など異なる質感を生み出す。音色面では打楽器の多層化と金属的効果音が場面転換を際立たせ、映像のカットや動きと精密に同期する書法が採られている。
歴史的背景
映画『燃えよドラゴン』は、ブルース・リーの最後の完成作として1973年に公開され、武術映画を世界規模で普及させる転機となった。アルゼンチン出身の作曲家ラロ・シフリンは、ジャズとクラシック、映画音楽を横断する語法で知られ、本作でも時代性を反映したファンクの語彙と管弦楽のダイナミクスを融合。ハリウッドがアクション映画の音響を刷新していく過程で、本スコアは“都会的クールさ”と“緊迫感”を同居させるモデルケースの一つとなった。公開と同年に音楽も広く流通し、以後の関連再発・編集盤でも代表曲として位置づけられている。
使用された映画・舞台(該当時)
楽曲は映画『燃えよドラゴン』のオープニング・タイトルをはじめ、トーナメントや潜入シーン、対決場面などで主題の断片やリズム要素が再配置される。映像の編集点と一致するブレイクやフィルが多用され、動作のキメに合わせたブラスのヒットや打楽器のアクセントが、画面の運動エネルギーを倍加させる仕組みだ。物語進行に伴い、主題は厚みや編成を変えながら再登場し、観客に状況の緊張度や舞台のスケール感を直感的に伝える。
現代における評価と影響
本曲は1970年代アクション映画の音響イメージを代表するテーマとして高く評価され、映画音楽やライブラリ音源の文脈でも参照され続けている。テレビ番組や映像予告での引用、オマージュの対象となることが多く、ファンクとオーケストラのミクスチャーはのちのアクション/スパイ物のスコアにも影響を及ぼした。コンサート用のフィルム・ミュージック特集でも取り上げられる機会があり、シフリン作品の中でも広範に認知された楽曲の一つとなっている。現行のサウンドトラック再評価の潮流の中でも重要作として言及される機会は多い。
まとめ
「Enter The Dragon」は、簡潔な主題と強靭なリズム処理で映像の推進力を支える、70年代映画音楽の金字塔である。ファンクの機能性とオーケストラの劇的効果を高次で結びつけた本スコアは、映画『燃えよドラゴン』の魅力を音響面から決定づけると同時に、アクション映画音楽のスタンダードを更新したと言える。