アーティスト情報なし
Waltzing Matilda
- 作曲: COWAN MARIE,MACPHERSON CHRISTIAN RUTHERFORD

Waltzing Matilda - 楽譜サンプル
Waltzing Matilda|歌詞の意味と歴史
基本情報
「Waltzing Matilda」は、オーストラリアを代表するブッシュ・バラッドで、しばしば「非公式の国歌」と呼ばれる。作曲はChristina Rutherford MacphersonとMarie Cowan、作詞はA. B. “Banjo” Paterson。1895年ごろに詞が作られ、1903年にCowanが広告用に編曲した版が広まり、現在一般に歌われる形の基礎になった。民謡的性格が強く、地域や時期によって歌詞・旋律に違いがある。
歌詞のテーマと意味
歌は放浪労働者“swagman”が、水辺“billabong”で羊“jumbuck”を得て追われ、悲劇的な結末を迎える物語。タイトルの“Waltzing Matilda”は、荷物“Matilda”を背負って歩く=旅をするという俗語表現を指し、開拓時代の移動労働や自由への憧れ、そして弱者の視点を映す。具体的な地名・人物を断定する根拠はなく、象徴的な物語として受け止められている。
歴史的背景
旋律はMacphersonが当時耳にした曲想(スコットランドの楽曲に由来するとされる)を基に整理し、Patersonの詞が乗せられた。その後、Cowanが商業広告に適う明快な旋律・伴奏へ整えたことで全国的に普及。ブッシュ文化の語彙や生活感を包含し、都市化以前のオーストラリア像を伝える資料的価値も高い。歌詞には豪州特有の言い回しが多く、語学・民俗学の観点からも研究対象となっている。
有名な演奏・映画での使用
Slim Dustyが2000年シドニー五輪閉会式で歌い、観客の大合唱を導いたことは象徴的。フォーク・グループThe Seekersなど多数の録音が存在する。映画では、冷戦終末映画「On the Beach」(1959)で主題動機として繰り返し用いられ、オーストラリア性を強調する役割を担った。さらにTom Waitsの“Tom Traubert’s Blues”は副題的に本曲のリフレインを引用する別曲として知られる。
現代における評価と影響
学校教育や式典、スポーツイベントまで幅広く歌われ、オーストラリアを想起させる音のアイコンとして国際的に認知される。一方で、物語の解釈は多層的で、反権力のバラッドとして読む立場もあれば、郷愁の歌として親しむ向きもある。方言語彙の普及や観光資源化など、文化的・経済的波及も大きい。録音・出版の系譜が豊富なため、研究者は版ごとの差異にも注目している。
まとめ
民謡としての親しみやすさと物語性を併せ持つ本曲は、作曲者二名と作詞者の協働を経て国民的レパートリーとなった。歴史と風土を映すレンズとして、今後も演奏と研究の双方で参照され続けるだろう。歌詞の全文はここでは扱わないが、語彙と背景を知ることで、歌の奥行きがいっそう明確になる。