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I'll Remember April
- 作曲: JOHNSTON PATRICIA BIZONY, PAUL GENE, RAYE DON

I'll Remember April - 楽譜サンプル
I'll Remember April|楽曲の特徴と歴史
基本情報
I'll Remember Aprilは、作曲Gene de Paul、作詞Patricia JohnstonとDon Rayeによる1941年の楽曲。1940年代の映画で紹介され、以後ジャズ界で広く演奏されるスタンダードとして定着した。叙情的な歌詞を持つポピュラー・ソング起源だが、アドリブの余地が大きい和声進行により、ビバップ以降の即興演奏の重要レパートリーとなった。歌としても器楽曲としても成立し、セッションや教育現場で頻出する。
音楽的特徴と演奏スタイル
32小節形式を基調とし、相対調(メジャー/マイナー)の行き来や長いII-V進行が特徴。旋律は広い跳躍と滑らかなラインが共存し、歌唱ではレガートが映える。モダンジャズ演奏では、Aセクションをラテン(ボサ/サンバ風)、ブリッジをスウィングで転換する定番アレンジがよく用いられる。中速〜速めのテンポが一般的だが、バラード解釈も可能。イントロにペダルトーンやモーダルなヴァンプ、エンディングにタグ反復を配す設計も定番で、コード置換の自由度が高い。
歴史的背景
発表当初はポピュラー映画の一曲として知られたが、戦後のビバップ期に即興性の高い素材として注目を集めた。とりわけ1940年代後半〜1950年代にかけて多くのジャズ・ミュージシャンがレパートリーに採用し、クラブやジャム・セッションで定番化。楽曲構造の柔軟さが、時代ごとのリズム感やハーモニーの更新に耐えうる器となり、後続世代にも継承された。今日では教則書やリアルブック系資料にも標準収録されている。
有名な演奏・録音
名演は数多い。代表例として、Charlie ParkerやChet Baker、Clifford Brown、Stan Getz、Bill Evans、Wes Montgomeryらの録音は、解釈の幅と即興語彙の豊かさを示す好例として参照される。コンボではクァルテット/クインテット編成が主流で、ピアノ・トリオによるハーモニーの再解釈も盛ん。ラテン・フィールとスウィングを切り替える実演アプローチは、ライブ録音で特に効果的に機能する。
現代における評価と影響
現在も世界中のジャム・セッションで頻出し、和声把握、モチーフ展開、フィール転換の練習素材として重宝される。ヴォーカルは歌詞の抒情性を生かし、インストはコード置換やモーダル解釈で現代化が可能。教育現場では、相対調の軌道とロングII-Vのフレージング、フォーム意識を同時に鍛えられる教材として評価が高い。ビッグバンド用の編曲も多く、場面に応じて多彩な演出が可能だ。
まとめ
I'll Remember Aprilは、映画発のポピュラー・ソングがジャズに取り込まれ、時代を超えて磨かれてきた典型例である。旋律美と和声的余白、フィールの可塑性が演奏者の創造性を刺激し続け、スタンダードとしての地位を確固たるものにしている。初学者から上級者まで、歌・器楽を問わず学びと表現の糧となる一曲だ。