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P.S.I Love You
- 作曲: JENKINS GORDON,MERCER JOHN H

P.S.I Love You - 楽譜サンプル
P.S.I Love You|楽曲の特徴と歴史
基本情報
『P.S.I Love You』は、Gordon Jenkins(作曲)とJohnny Mercer(作詞)による1934年発表のバラード。米国のトラディショナル・ポップ/ジャズ・スタンダードとして定着し、今日まで幅広く歌われ続けている。タイトルが同名のビートルズ曲(1962)と混同されがちだが、まったくの別作品である点に注意。初演者や初ヒットの詳細、初出媒体は情報不明。恋文の末尾に添える「追伸(P.S.)」を題材に、親密で私的な語り口が聴き手に近距離感をもたらすのが特徴だ。
音楽的特徴と演奏スタイル
典型的なスタンダード形式(AABA系)で構成されるスロー〜ミディアムのバラード。穏やかに流れる旋律線とクロマチックを含む柔らかな和声進行が、手紙を読む語り口と好相性だ。ヴォーカルではブレスと間合いが要で、語尾のコントロールやレガート処理が表情を決める。ピアノ・トリオからストリングス入りの大編成まで編成適応性が高く、イントロに自由なルバート、アウトロでのフェイドやテンポ・ルバートも好まれる。器楽演奏ではメロディの節回しを活かしたシンプルなアドリブが効果的で、過度なヴィルトゥオーゾより歌心が重視される。
歴史的背景
1930年代はティン・パン・アレーとスウィング創成期が重なり、ラジオとレコード産業の拡大がスタンダードの普及を後押しした。作詞家として頭角を現したJohnny Mercerと、編曲家・指揮者として後年も多方面で活躍するGordon Jenkinsのコラボレーションは、当時の洗練された都会的感性を体現。発表から間もなく多くの歌手が取り上げ、ダンスホールや放送を通じて広まったと考えられるが、初出の舞台や映画使用の一次情報は情報不明である。
有名な演奏・録音
繊細なストリングス伴奏で知られるフランク・シナトラの録音、そしてJohnny Mercer作品集の文脈で再解釈したエラ・フィッツジェラルドの歌唱は、ともに代表的なリファレンスとして言及されることが多い。ほかにも多数の一流ヴォーカリストやジャズ・ミュージシャンが録音を残しており、アレンジはピアノを中心とした小編成からオーケストラルなバラードまで多彩。具体的な初出チャート情報や売上記録は情報不明だが、録音点数の多さが本曲の定番性を裏づけている。
現代における評価と影響
今日ではアメリカン・ソングブック系レパートリーの中核曲として、ライヴやレコーディング、音楽教育の現場で扱われる機会が多い。歌詞の親密なテーマと普遍的なメロディは年代や編成を超えて機能し、配信時代にも新録が継続。ビートルズの同名曲との混同を避ける注記が一般化している点も、楽曲検索や番組編成上の実務におけるトピックとなっている。
まとめ
『P.S.I Love You』は、追伸という日常的モチーフを洗練のバラードへ昇華したジャズ・スタンダードである。形式はシンプルながら表現の余地が広く、ヴォーカル/器楽いずれにも映える。1934年の誕生以来、数多の名演が蓄積され、現在も愛唱曲として生き続けている。初演やヒットの細部は情報不明な部分が残るものの、その曖昧さを補って余りある普遍性と可塑性が本曲の価値を支えている。