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E.S.P

  • 作曲: SHORTER WAYNE
#スタンダードジャズ
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E.S.P - 楽譜サンプル

E.S.P|楽曲の特徴と歴史

基本情報

E.S.PはSHORTER WAYNE(ウェイン・ショーター)によるインストゥルメンタル作品で、1965年にMiles Davis Quintetのアルバム『E.S.P.』で初出。編成はトランペット、テナーサックス、ピアノ、ベース、ドラム。歌詞は存在せず作詞者は情報不明。ショーター、ハービー・ハンコック、ロン・カーター、トニー・ウィリアムスという布陣により、モダン・ジャズの新局面を提示した。曲名は“Extra-Sensory Perception”の略称とされ、テレパシー的な相互反応を象徴するタイトルだが、命名経緯の詳細は情報不明。

音楽的特徴と演奏スタイル

ポスト・バップ的語法に基づき、明確なトーナル・センターに依存しない和声感と、跳躍を含む鋭角的な主題が核。テーマ提示後は、暗示的なハーモニーを土台に自由度の高い即興が展開され、リズム・セクションはポリリズミックな推進力と柔軟なダイナミクスで対話を支える。テンポは中速〜やや速め。ピアノのヴォイシング、ベースのライン設計、ドラムのシンコペーションが互いを駆動し、ソロイストはスペースを活かしながら緊張と解放を彫刻する。

歴史的背景

本作が収録された『E.S.P.』(1965年)は、マイルス・デイヴィス第二期クインテットのスタジオ作として重要な位置を占め、レパートリーの重心がスタンダードからメンバーのオリジナルへと移行した転換点を画した。モード以降の探究が進む中、作曲と即興の境界を曖昧にし、形式の柔軟性と集団即興の精度を高める試みが結実。E.S.Pは、緊密なアンサンブル設計と自由度の両立という当時の先端的美学を体現する一曲である。

有名な演奏・録音

基準となる録音はMiles Davis Quintet『E.S.P.』(1965)。参加メンバーはマイルス・デイヴィス(トランペット)、ウェイン・ショーター(テナーサックス)、ハービー・ハンコック(ピアノ)、ロン・カーター(ベース)、トニー・ウィリアムス(ドラム)。これ以外の代表的商業録音や映画での使用に関しては情報不明。

現代における評価と影響

E.S.Pは、機能和声に回収されにくい主題設計や、相互聴取を前提としたリズム・セクションの自律性といった要素により、以後のアコースティック・ジャズの語彙形成に影響を与えたと評価される。作曲・即興・アレンジの三者が等価に関与する設計思想は、教育・研究の文脈でも参照点となり、ポスト・バップ以降の美学を理解する上で欠かせない教材的役割を担っている。

まとめ

ショーターの精緻な作曲術と、第二期クインテットの高度なインタープレイが交差するE.S.Pは、抽象度の高い素材を共有しつつ瞬発力で構造を生む美学を明確に示す。初出録音を起点に、テーマの輪郭、和声の曖昧さ、リズムの揺らぎを聴き分けることで、本作の核心—自由と統制の緊張関係—が立ち上がってくるだろう。