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Around The World
- 作曲: YOUNG VICTOR POPULAR

Around The World - 楽譜サンプル
Around The World|作品の特徴と歴史
基本情報
『Around The World』は、映画『八十日間世界一周』(1956年公開)のために書かれたテーマ音楽。作曲者はYOUNG VICTOR POPULARとクレジットされている。のちにハロルド・アダムソンが歌詞を付けて発表され、インストゥルメンタル版と歌唱版の双方で幅広く親しまれている。映画音楽としての起源を持ちながら、独立した楽曲として単独演奏・録音の歴史も豊富で、映画界とポピュラー音楽界の橋渡し的存在となった。
音楽的特徴と表現
ゆるやかに上昇し大きく弧を描く旋律線が最大の魅力で、旅の広がりや地平線を思わせる伸びやかさを備える。ストリングスを中心としたオーケストレーションは滑らかで、柔らかな和声進行と要所の転調がロマンティックな高揚を生む。テンポは過度に急かさず、悠然とした歩みを感じさせる設計。歌詞版では言葉の抑揚を損なわない旋律の置き方が巧みで、器楽版・歌唱版いずれでも主題の美しさが損なわれない普遍性がある。
歴史的背景
1950年代半ばは大作ロードショー映画が隆盛し、主題音楽が作品のアイデンティティを担う潮流が強まった。本作もその文脈に位置づけられ、映画公開とともにテーマが広く浸透。作曲者は同作スコアでアカデミー賞(劇・喜劇映画音楽賞)を受賞しており、映画音楽史上でも重要な達成として記憶される。公開後まもなく歌詞版が登場し、映画館の外でもヒットを重ねたことで、主題曲の汎用性と影響力が一段と高まった。
使用された映画・舞台(該当時)
映画『八十日間世界一周』において、本曲は物語全体を貫く主題として繰り返し登場し、旅情とスケール感を喚起する役割を担った。主要モチーフは場面の気分に応じて編成やダイナミクスが変奏され、映像のテンポと地理的移動感を音楽的に補強。観客は視覚的スペクタクルとともに、忘れがたい旋律を通じて作品世界へと誘われる設計になっている。舞台使用に関する一次情報は情報不明。
現代における評価と影響
本曲は映画主題曲としての枠を超え、ポピュラー/イージーリスニングのスタンダードとして定着。ビング・クロスビーやナット・キング・コール、マンタヴァーニ楽団などの録音が知られ、オーケストラ・サロン楽団・ジャズ寄りの編成まで幅広く取り上げられている。コンピレーションやシネマ音楽のコンサートでの演奏機会も多く、旅・世界・ロマンを想起させる象徴的メロディとして今日も引用・再演が続く。
まとめ
『Around The World』は、映画音楽としての機能性と、単独の楽曲としての普遍的な魅力を併せ持つ名曲である。大きく息づく旋律と洗練されたオーケストレーションは、公開から半世紀以上を経ても色褪せず、録音・編曲の蓄積が評価を支えてきた。映画史とポピュラー音楽史の交点に立つ一曲として、今後も再演・再評価が続くことは間違いない。