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Heartbreak Hotel

  • 作曲: AXTON MAE BOREN,DURDEN THOMAS,PRESLEY ELVIS
#洋楽ポップス
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Heartbreak Hotel - 楽譜サンプル

Heartbreak Hotel|歌詞の意味と歴史

基本情報

Heartbreak Hotel は、Mae Boren Axton/Tommy Durden/Elvis Presley による1956年の楽曲。エルヴィス・プレスリーがRCAから発表したシングルとして広く知られ、ロックンロール期を象徴する代表曲の一つである。荒涼とした世界観を、低音域を効かせたボーカルと簡潔なバンド編成、強いスラップバック・エコーで描き出し、全米チャートで首位を獲得。プレスリーに初のミリオンセラーとゴールドディスクをもたらしたとされる。

歌詞のテーマと意味

本作の語りは、失恋によって深い孤独へ沈む主人公の心象描写に焦点を当てる。ホテルという場所は、喪失と断絶の象徴として機能し、人の往来があるはずの空間が逆説的に空虚さを増幅させる。反復の多い簡潔な言葉運びは、感情の行き場をなくした停滞感を伝える狙いがあり、エコーの効いたボーカル処理と合わさって、冷たい空間に声が反響するような心理的距離を演出している。結果として、恋の破綻が生む孤独を、具体的描写より体感的なサウンドで聴き手に刻み込む。

歴史的背景

着想は、トミー・ダーデンが新聞記事で目にした自殺報道から得られたと広く伝えられており、そのアイデアを基にメイ・ボーレン・アクストンと共作。エルヴィスは編曲面を含めた創作に関与し、RCA移籍後の初期セッション(1956年、ナッシュビル録音)でレコーディングされた。プロデュースはスティーブ・ショールズ。ギター、ウッドベース、ドラムスにピアノを加えたミニマルな編成で、当時のロカビリー的躍動よりも陰影を重視したサウンドに舵を切った。発売直後から急速に支持を広げ、全米1位、ミリオンセラーを達成した。

有名な演奏・映画での使用

エルヴィス自身が全米ネットのテレビ番組やコンサートで繰り返し披露し、初期イメージを決定づけたナンバーとして定着。のちに多くのロック、カントリー、ブルース系アーティストがカバーを行い、ステージの定番曲としても継承されている。映画・ドラマ・CMなど映像作品での使用例は多数報告されるが、本稿での具体的な作品名は情報不明。音楽史的名演としてはオリジナル・シングル盤が最も参照される。

現代における評価と影響

Heartbreak Hotel は、明るいダンス志向だけがロックンロールではないことを示し、陰影や虚無感をロックの表現領域へ持ち込んだ嚆矢として評価される。スラップバック・エコーの活用、間合いを重視したリズム、低重心のボーカルは、その後のロック・バラードやロカビリー再解釈に大きな影響を与えた。評論家・研究者の間でも、エルヴィスのブレイクを決定づけた転換点の一曲としてしばしば取り上げられ、今日も音楽史の基礎文献・プレイリストに欠かせない存在である。

まとめ

失恋の孤独を、簡潔な詞と空間的サウンドで刻んだHeartbreak Hotel。1956年のヒットはエルヴィスの時代を告げ、ロックの表現幅を拡張した。事実に裏打ちされた制作背景と独自の音響処理は、半世紀以上を経ても色褪せず、今なお多くの聴き手と演奏家に再発見され続けている。