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If I Were A Bell
- 作曲: LOESSER FRANK

If I Were A Bell - 楽譜サンプル
If I Were A Bell|楽曲の特徴と歴史
基本情報
『If I Were A Bell』は、フランク・ロウサーがブロードウェイ・ミュージカル『ガイズ・アンド・ドールズ』のために書いた楽曲。初演は1950年、ヒロインのサラ・ブラウンが心情を弾む調子で歌う。のちにジャズ界で頻繁に取り上げられ、いまやスタンダードである。
音楽的特徴と演奏スタイル
32小節AABA形式。明快な旋律に循環進行とセカンダリー・ドミナントが絡み、即興に適した“回しやすさ”を生む。ミディアム・スウィングが基本だが、軽快なボサやバラード解釈でも映える。ホーンはテーマ動機を装飾し、ピアノはシェル・ボイシングと分散和音で支えるのが典型。旋律は跳躍と順次進行の対比が巧みで、比喩的な「鐘」のイメージを想起させる高揚感がある。
歴史的背景
音楽・歌詞ともロウサー作。恋に落ちた高揚を「鐘」の比喩で描く場面歌として機能し、ブロードウェイ初演ではイザベル・ビグリーが歌唱。映画版『野郎どもと女たち』(1955年)ではジーン・シモンズが披露し、舞台とスクリーンを通じて一般に浸透した。こうした大衆的な認知が、後のジャズ界での受容を後押しした。
有名な演奏・録音
決定的な評価を与えたのが、マイルス・デイビス・クインテット『Relaxin’ with the Miles Davis Quintet』(1956)。ミュート・トランペットの抑制された歌心とリズム隊の呼応が、本曲のジャズ的魅力を鮮明に提示したと広く語られる。その後も多くのヴォーカル、ピアノ・トリオ、サックス奏者が録音し、セッションの定番として定着した。
現代における評価と影響
覚えやすい旋律と明快なコード進行、AABAの構造によって、レッスンやジャムで扱いやすい教材曲として評価が高い。ショー・チューンがジャズの語法と結びついた代表例として、ハーモニー運用やモチーフ展開の研究対象にもなり、作曲家ロウサーの職人芸は今日も再評価が続いている。
まとめ
『If I Were A Bell』は、舞台由来の親しみやすさと即興性の両立が光る名曲。時代や編成を超えて演奏され、聴き手にも演奏者にも豊かな表現の余地を提供し続けている。ジャズ入門から上級者の探究まで、幅広い層に価値を持つスタンダードである。