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In Walked Bud
- 作曲: MONK THELONIOUS S

In Walked Bud - 楽譜サンプル
In Walked Bud|楽曲の特徴と歴史
基本情報
セロニアス・モンク作「In Walked Bud」は、盟友バド・パウエルに捧げられた楽曲。初録音は1947年ブルーノート期で、以後もモンクの主要レパートリーとして頻繁に演奏された。後年ジョン・ヘンドリックスが歌詞を付与しヴォーカル版も生まれたが、中心はインストゥルメンタルのジャズ・スタンダードである。
音楽的特徴と演奏スタイル
32小節AABA形式を採り、既存曲「Blue Skies」の進行を基にしたコントラファクト。跳躍の大きい主題、強いシンコペーション、半音階的装飾が特徴で、モンク特有の間合いと“ずらし”が決定的な色合いを与える。テンポは中速〜アップ。ソロはモチーフ展開やガイドトーン・ラインが有効だ。ピアノは打楽器的アタックと間を活かし、ホーンはアクセントの位置を明確に取ると映える。
歴史的背景
1940年代後半ニューヨークのビバップ勃興期に生まれ、前衛的ハーモニーとリズム思考を体現。題名はパウエルの登場を示唆する敬意の表現とされる。初演や命名の厳密な経緯は情報不明だが、モンク像を語るうえで中核的な一曲である。モダン・ジャズの語彙が急速に洗練されていく現場感が、楽曲の推進力と構造に刻まれている。
有名な演奏・録音
代表録音は、1947年ブルーノートでの初期テイク、1958年ファイブ・スポットのライヴ(『Misterioso』収録)、1968年『Underground』でのジョン・ヘンドリックス参加ヴォーカル版。以降もモンク四重奏団を中心に多数のピアニストやサックス奏者が録音し、ジャム・セッションの常連曲となった。音域の跳躍とリズムの癖が、名手の個性を浮かび上がらせる。
現代における評価と影響
教育現場ではコントラファクトやリズム配置を学ぶ教材として扱われる。リアルブックにも定着し、ビッグバンドから小編成まで編成を問わずアレンジが豊富。演奏者のフレージングと間のセンスが顕著に現れる曲として評価が高い。ヴォーカル版の存在により、歌詞解釈と器楽的語法の橋渡しとしても活用されている。
まとめ
「In Walked Bud」は、ビバップ語法とモンクの個性が凝縮された名曲。明快な形式と独創的主題が共存し、今なお演奏・鑑賞の双方で新鮮さを失わない。歴史・理論・即興の三要素をバランス良く学べる、普遍的価値を備えたジャズ・スタンダードである。