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This Land Is Your Land(わが祖国)

  • 作曲: GUTHRIE WOODY
#洋楽ポップス
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This Land Is Your Land(わが祖国) - 楽譜サンプル

This Land Is Your Land(わが祖国)|歌詞の意味と歴史

基本情報

ウディ・ガスリーが1940年に作詞作曲したアメリカン・フォークの代表曲。原題はThis Land Is Your Land、日本語では「わが祖国」とも呼ばれる。1944年に録音され、のちにフォークウェイズ系レーベルから発表された。メロディはカーター・ファミリーが歌った賛美歌系の旋律(When the World’s on Fire など)に基づくとされ、誰でも歌える平易なコード進行と覚えやすいリフレインが特徴だ。

歌詞のテーマと意味

タイトルが示すとおり、「この土地はあなたのもの、わたしのもの」という包摂の理念を掲げ、海岸線や森林、砂漠といった風景を通じて、国土を共有する感覚を描く。一方で、多くの録音で省かれてきた連節には、私有地の看板や救済事務所の列が登場し、貧困や格差への批評性が滲む。祝祭と告発の二面性が共存することで、単なる愛唱歌を超え、公共性と社会正義をめぐる問いをリスナーに返す構造になっている。

歴史的背景

当時ラジオで頻繁に流れていた「God Bless America」への応答として書かれたとされ、ガスリーは移動の多い生活の中で、民衆の言葉と旋律で歌える対抗的な「国民歌」を志向した。大恐慌やダストボウルの記憶が残る時代に、自然賛歌の装いで社会の不平等を問い直す視点を忍ばせたことが、本曲の独自性を形成している。簡素なフォーク様式を採用したのも、広く共有されることを目的とした選択だ。

有名な演奏・映画での使用

ピート・シーガー、ボブ・ディラン、ブルース・スプリングスティーンなど、多数のアーティストがレパートリーに取り入れ、フォークからロックまで幅広く歌い継いだ。2009年の米大統領就任関連イベントでは、シーガーとスプリングスティーンが共演し、省略されがちな節を含めて披露したことでも注目を集めた。映画『Bound for Glory』(1976)をはじめ、ドキュメンタリーや教育番組でも象徴的に用いられてきた。

現代における評価と影響

学校や地域行事で親しまれる一方、労働運動や公民権運動、移民の権利を訴える集会など、社会運動の現場でも歌い継がれる。祝祭性と批評性の両立が、儀礼的なセレモニーから抗議の場まで多様な文脈での機能を可能にし、「もう一つの国歌」とも評されるゆえんだ。歌詞の解釈や省略の可否をめぐる議論がしばしば起きること自体、本曲が公共圏の議題と密接に結びついている証左といえる。

まとめ

This Land Is Your Land(わが祖国)は、国土を分かち合う理念と社会的公正への視線を併せ持つフォーク・スタンダードである。簡素な旋律ゆえに誰もが歌える一方、歌う場によって意味が更新され続ける可塑性を備える。時代や立場の違いを横断して共有され、なお思考を促すこの二重性こそが、曲の持続的な生命力を支えている。