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All at Once You Love Her
- 作曲: RODGERS RICHARD

All at Once You Love Her - 楽譜サンプル
All at Once You Love Her|楽曲の特徴と歴史
基本情報
「All at Once You Love Her」は、Richard Rodgers作曲、Oscar Hammerstein II作詞による1955年のブロードウェイ・ミュージカル「Pipe Dream」収載曲。英語詞を持つバラードで、舞台発のショー・チューンとして知られ、のちにジャズ・スタンダードとしても親しまれている。正式な初演年は1955年、原典は舞台楽曲である。
音楽的特徴と演奏スタイル
ロジャースらしい自然で流麗な旋律線が魅力。穏やかな和声進行の中に半音階的な動きや転調感が織り込まれ、歌詞の「気づいた瞬間に愛が芽生える」情感を巧みに支える。テンポはバラード〜ミディアムで演奏されることが多く、ヴォーカルはルバートの導入からスウィングに乗せる解釈が定番。器楽ではテーマを丁寧に歌わせ、後半でテンションを積むアレンジがよく合う。キー設定やリハーモナイズは演者により幅広く、ピアノ・トリオやギター伴奏にも相性が良い。
歴史的背景
「Pipe Dream」はジョン・スタインベックの小説「Sweet Thursday」を原作とし、ロジャース&ハマースタインの作品群の中では比較的短命で、興行的には大ヒットに至らなかった。それでも本曲は、耳に残る旋律と普遍的な恋のテーマによって、舞台外で独立した生命を得て、ジャズやトラディショナル・ポップのレパートリーへと広がっていった。舞台曲がクラブやレコード市場へ移行し、標準曲集に定着する典型例といえる。
有名な演奏・録音
初演当時のオリジナル・ブロードウェイ・キャスト録音が存在し、その後は多くのヴォーカリストやビッグバンド、コンボによって取り上げられている。スタジオ録音だけでなく、ライヴ盤やスタンダード集にも収録例が多く、編曲はボサ・ノヴァ風、3拍子化、ストリングス伴奏など多様。具体的な代表録音名は情報不明だが、ショー・チューン/ジャズ双方の文脈で継続的にカバーされている。
現代における評価と影響
今日では、ショー・チューン発のスタンダードとして、歌唱力と表現力を試す教材的な位置づけも持つ。ジャズでは内省的なバラード・セットを彩る1曲として重宝され、音大やワークショップのレパートリーにも採用される例がある。歌詞の普遍性とメロディの美しさが、世代やジャンルを越えてカバーを促し続け、演奏現場ではバラードの核としてプログラムを支える存在になっている。
まとめ
舞台生まれの名旋律が、時代を超えてスタンダードへと成長した好例が「All at Once You Love Her」だ。ロジャースの旋律美とハマースタインの物語性が結晶し、ヴォーカルでも器楽でも映える柔軟性を備える。過度な技巧に頼らず感情の推進力で聴かせられるため、入門者から熟練奏者まで、表現の幅を広げたいときに選びたい一曲である。