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Crying
- 作曲: MELSON JOE,ORBISON ROY

Crying - 楽譜サンプル
Crying|歌詞の意味と歴史
基本情報
Roy OrbisonがJoe Melsonと共作し、Monument Recordsから1961年に発表。プロデュースはFred Foster。伸びやかなテナーとオーケストラ伴奏が融合したポップ・バラードで、作曲・作詞はいずれもMELSON JOEとORBISON ROYによる共作。初出アルバムは情報不明。
歌詞のテーマと意味
主人公は別れた相手に再会し、平静を装いながらも内側では涙が止まらない。誇りと未練の綱引き、表面と内面の乖離がモチーフで、タイトル語の反復が抑えきれない感情のうねりを象徴する。語りかける二人称の表現が、密やかな独白から劇的な告白へと変わる心理の高まりを描き、聴き手に普遍的な失恋の痛みを想起させる。
歴史的背景
ロックンロール勃興後、米ポップスはストリングスやコーラスを導入したナッシュビル的洗練へ向かった時期。オービソンはバラードを壮大に積み上げる構築美で頭角を現し、本作はその方法論を決定づけた。静かな導入からクライマックスまで段階的にダイナミクスを拡張し、声域の跳躍と転調風の高揚で強いカタルシスを生む点が時代の中で際立った。
有名な演奏・映画での使用
カバーは多岐にわたり、Don McLeanのヴァージョン、Roy Orbisonとk.d. langのデュエット版などが広く知られる。デュエット版はグラミー賞を受賞し、原曲のドラマ性を再認識させた。映画ではデヴィッド・リンチ『マルホランド・ドライブ』におけるレベッカ・デル・リオのスペイン語版「Llorando」が象徴的で、楽曲の情念が新たな映像文脈で鮮烈に活かされた。
現代における評価と影響
現在も歌唱力を示す定番レパートリーとして評価が高く、配信時代でも再発見が進む。ミニマルな語彙とメロディの拡張で大きな感情曲線を描く設計は、後続のパワー・バラードやシネマティック・ポップの手本となり、アレンジやミックスの観点でも参照点が多い。CMやドラマでの使用歴は情報不明だが、カバーと映像使用を通じて世代横断的に浸透している。
まとめ
Cryingは、抑制と爆発のコントラストで失恋の痛みを普遍化した名曲。緻密な作曲・作詞、丹念なスタジオワーク、そしてオービソンの声のドラマが三位一体となり、半世紀以上経ても色褪せない。多様なカバーや映画での再解釈が、その表現力の普遍性を改めて証明している。