Everything's Coming Up Roses
- 作曲: STYNE JULE

Everything's Coming Up Roses - 楽譜サンプル
Everything's Coming Up Roses|楽曲の特徴と歴史
基本情報
1959年ブロードウェイ初演のミュージカル『Gypsy(ジプシー)』の楽曲。作曲ジュール・スタイン、作詞スティーヴン・ソンドハイム。劇中では母ローズのナンバーとして第1幕終盤に歌われ、強烈な楽観と執念を示す決定的モーメントを担う。以来、ショー・チューンの名曲として定番化し、ジャズのレパートリーにも取り込まれている。日本語題は定着形がなく、原題で流通している。
音楽的特徴と演奏スタイル
堂々たるブロードウェイ様式で、明快なメロディは上昇系モチーフの反復からサビで決然と解放される。ブラス主体のアレンジが映え、マーチ的な推進力からスイングへと展開しやすい構造を持つ。ジャズではミディアム〜アップの4ビートで、ブレイクを利かせたコール&レスポンスや強拍のアクセントが定番。歌唱では言葉の畳みかけとロングトーンの対比がドラマ性を高め、終結部に向けてテンポ感を押し上げる演出が効果的だ。
歴史的背景
『ジプシー』はバーレスクのスター、ジプシー・ローズ・リーの半生を題材に、母ローズの野心を軸に描く物語。『ウエスト・サイド物語』に続き、若きソンドハイムが作詞を担当し、スタインのキャッチーな旋律と鋭い言葉運びが結び付いた。初演でローズ役のエセル・マーマンがこの曲を当たり役として確立し、迫力ある歌唱が楽曲の性格を決定づけた。1959年というブロードウェイ黄金期の文脈が、華やかなサウンドと大胆な自己肯定のメッセージを後押しした。
有名な演奏・録音
基準点となるのはオリジナル・ブロードウェイ・キャスト盤のエセル・マーマン版。続く名演としてアンジェラ・ランズベリー(1974年リバイバル)、タイン・デイリー(1990年)、バーナデット・ピーターズ(2003年)、パティ・ルポーン(2008年)らのキャスト録音が挙げられる。コンサートではジュディ・ガーランドの力強い解釈が著名で、テレビ映画版(1993年)のベット・ミドラーも広く知られる。ビッグバンドやシンガーによるジャズ寄りのカバーも多数存在する。
現代における評価と影響
題名のフレーズは「何もかも順調に行く」の意味で英語圏に広く浸透し、曲がそのニュアンスを決定づけた。舞台作品の代表曲として現在も各地の公演やコンサートで取り上げられ、オーディション曲としても定番。アレンジの自由度が高く、ショー・クワイアやビッグバンド編成にも適合するため、教育現場やイベントで採用される例が多い。ショー・チューンとジャズの橋渡しを担うレパートリーとして評価され続けている。
まとめ
力強いメロディと劇的構成でキャラクターの心理を解放する名曲。初演以来、多様な解釈を生み、舞台とジャズ双方で生き続けるスタンダードである。初演版と各リバイバル、コンサート歌手の録音を聴き比べれば、その普遍性と可塑性がいっそう明確になる。