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It Could Happen To You
- 作曲: VAN HEUSEN JIMMY

It Could Happen To You - 楽譜サンプル
It Could Happen To You|楽曲の特徴と歴史
基本情報
Jimmy Van Heusen作曲、Johnny Burke作詞によるスタンダード。1944年のパラマウント映画『And the Angels Sing』でDorothy Lamourが紹介し広く知られた。32小節AABAの典型的形式で、バラードからミディアム・スウィングまで対応。恋は思いがけず訪れるという含蓄あるテーマが核で、歌物としても器楽曲としても親しまれている。
音楽的特徴と演奏スタイル
メロディは滑らかな順次進行に小さな跳躍を織り交ぜ、会話的にフレーズが着地する。和声は循環進行と副次ドミナントが要所を彩り、内声の半音進行が甘美さを生む。イントロで自由テンポから入り、テーマで2ビート→4ビートへ移行する定石も多い。リハーモナイズとしてトライトーン置換や裏コードを用いる解釈もしばしば見られる。
歴史的背景
40年代の映画音楽/ポピュラー作曲家として活躍したVan Heusenと、名作詞家Burkeの黄金コンビによる一曲。戦時期の映画から生まれ、ラジオとレコード市場を通じて一般層へ浸透、その後はビバップ以降のジャズ・ミュージシャンに取り上げられ、グレイト・アメリカン・ソングブックの重要曲として定着した。
有名な演奏・録音
映画でのDorothy Lamourの歌唱を端緒に、Bing Crosbyらが録音。Frank Sinatraも1950年代にレパートリー化し、クルーナー系の名唱を残した。器楽ではMiles Davisのクインテット、トランペッターChet Baker(『It Could Happen to You: Chet Baker Sings』)の歌唱版が特に知られる。ピアノ・トリオやサックス奏者の定番レパートリーでもある。
現代における評価と影響
リアルブック収載の定番として教育現場とセッションで頻繁に演奏され、若手がスタンダード語法を学ぶ教材曲の一つ。AABAの明快な構造と、適度に複雑な和声が即興の練習に最適で、テンポや調性の選択自由度も高い。CMや舞台で引用されることもあり、世代を超えて親しまれている。
まとめ
映画由来のポピュラー曲として誕生し、ジャズの現場で磨かれてきたIt Could Happen To Youは、歌の魅力と即興性を両立させる希有な一曲。端正なメロディと柔軟な和声設計が、多彩な解釈を可能にし、今なお演奏家と聴き手の双方を惹きつけ続けている。