アーティスト情報なし
I Can't Stand It
- 作曲: CLAPTON ERIC PATRICK

I Can't Stand It - 楽譜サンプル
I Can't Stand It|歌詞の意味と歴史
基本情報
1981年発表のシングル。アルバム『Another Ticket』に収録され、作曲・作詞はエリック・クラプトン。プロデュースは名匠トム・ダウド、レーベルはRSO/Polydor。軽快なミッドテンポと艶のあるストラトキャスターのリフ、コーラスの掛け合いが印象的で、ラジオ映えするポップ志向とブルースの語法が均衡したナンバーである。
歌詞のテーマと意味
歌詞は恋愛関係における嫉妬と不信、限界に達した心情を端的に吐露する内容。相手の曖昧な態度に対する苛立ちと、踏み出すか留まるかの葛藤が、反復されるフレーズと切れの良いギターで強調される。甘いメロディの下に、成熟した視点からの自己防衛と境界線の引き方が描かれ、クラプトンのシンガーとしての語り口が感情の温度差を巧みに伝えている。
歴史的背景
70年代のブルース・ロック期を経て、80年代の洗練されたサウンドへ移行する過程に位置する1曲。『Another Ticket』はRSOレコード在籍期の締めくくりとなる作品で、本曲はその中核シングルとして広くラジオでオンエアされた。米国市場で好調なチャート実績を残し、クラプトンがポップ・フィールを伴うソングライターとしても評価される契機となった。
有名な演奏・映画での使用
1981年のツアーではセットリストの要所を担い、アルバート・リーらとのツイン・ギターがスタジオ盤の推進力を拡張した。商業リリースされた決定版ライヴ音源や、映画での顕著な使用については情報不明だが、クラシック・ロック系のラジオ番組やプレイリストでは現在も定番曲として扱われることが多い。
現代における評価と影響
派手な技巧を誇示せず、端正なコードワークと歌心で聴かせる点が今日的な耳にも新鮮。ブルースの語彙をポップ・ソングの構造に落とし込む手腕は、AORやアメリカン・ロックの文脈でも参照される。サウンド面ではクリーン〜軽いオーバードライブのギター・トーン、タイトなリズム・セクションの抑制美が、後続世代の実演家に手本として意識されている。
まとめ
『I Can't Stand It』は、私小説的な感情とラジオ・フレンドリーな普遍性を両立させた、クラプトン80年代の起点を象徴する楽曲。過度な装飾に頼らず、旋律とグルーヴで記憶に残すその構築力こそが、今なお聴き継がれる理由である。