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I'd Rather Be Blue Over You
- 作曲: FISHER FRED,ROSE BILLY

I'd Rather Be Blue Over You - 楽譜サンプル
I'd Rather Be Blue Over You|歌詞の意味と歴史
基本情報
Fred Fisher作曲、Billy Rose作詞による1928年のポピュラー・ソング。正式題は “I’d Rather Be Blue Over You (Than Happy with Somebody Else)”。歌入りの楽曲で、ファニー・ブライスが映画『My Man』で披露して広く知られた。以降、レビューやキャバレーの定番として受け継がれている。
歌詞のテーマと意味
恋人の不在に沈む“ブルー”であっても、ほかの誰かと形式的な幸福を得るよりまし——という一途さを、ユーモアと自己風刺を交えて歌う。哀愁と軽妙さの同居が魅力で、泣き歌とコミック・ソングの間を行き来する表現が、舞台芸の味わいを生み出している。過度な悲嘆ではなく、ウィットで自分を鼓舞する姿勢が共感を呼ぶ。
歴史的背景
本作はティン・パン・アレー最盛期に生まれ、ヴォードヴィル/レビュー文化の中で支持を得た。サイレントからトーキーへ移行する1928年、ブライス主演の部分トーキー映画『My Man』での起用が決定打となり、レパートリーとして定着。舞台のコメディ・センスとポピュラー・バラードの情感を併せ持つ点が、当時のエンターテインメント性と見事に噛み合った。
有名な演奏・映画での使用
最初期の代表はファニー・ブライスの歌唱。さらに1968年の映画『ファニー・ガール』で、バーブラ・ストライサンドがブライス役として取り上げ、再評価を決定づけた。同作サウンドトラックでの洒脱なアレンジは、曲のコミカルでキュートな側面を前面化。以後、クラブやキャバレーの歌手による録音・ステージでも頻繁に取り上げられる。
現代における評価と影響
端的で覚えやすいリフレインと、自己肯定を含む切ないユーモアは時代を超えて通用する。映画音楽やブロードウェイ系の文脈で参照されることが多く、20世紀前半のポピュラー様式を学ぶ教材としても扱われる。配信時代でもサウンドトラック経由で新規聴取が続き、レトロ・ポップの魅力を伝える導入曲として一定の存在感を保っている。
まとめ
“悲しいなら他の誰かで幸せになるより、あなたを想って青く沈んでいたい”という逆説的な恋の宣言を、印象的なメロディにのせた一曲。ファニー・ブライスから『ファニー・ガール』まで、舞台と映画をつなぐ歴史を背負いながら、現在も生きたレパートリーであり続けている。短いフレーズに凝縮されたユーモアと情感こそ、本作の普遍性だ。