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ダッタン人の踊り
- 作曲: BORODIN ALEKSANDRE PORFIREVICH

ダッタン人の踊り - 楽譜サンプル
「ダッタン人の踊り |作品の特徴と歴史」
基本情報
『ダッタン人の踊り』は、ボロディンの歌劇『イーゴリ公』第2幕終盤に置かれた合唱付き舞曲群の総称。単独でもコンサート・ピースとして頻繁に演奏され、合唱版・管弦楽版・組曲編など多様な形で親しまれている。異民族ダッタン(ポロヴェツ人)の宴を描く場面音楽であり、女声・男声・全合唱と管弦楽が入れ替わりながら高揚していく構成が特徴である。
音楽的特徴と表現
明確な舞曲律動と躍動するオスティナート、増二度を含む旋法的な旋律が東方趣味の色彩を生む。女声合唱のしなやかな歌(乙女の踊り)から、男声の勇壮な合唱、全合唱と管弦楽のクライマックスへ段階的に拡張。木管の装飾的パッセージ、金管のファンファーレ、打楽器の鮮烈なアクセントが情景を生き生きと描き出す。静と動、単旋律的歌謡性と厚い和声の対比がドラマを推進し、旋律の記憶性の高さが強い印象を残す。
歴史的背景
原作は中世ロシアの叙事詩『イーゴリ遠征記』。作曲者ボロディンは化学者としても知られ、作曲は長期に及んだ。彼の没後、歌劇全体はリムスキー=コルサコフとグラズノフにより整備され、1890年にサンクトペテルブルクで初演された。『ダッタン人の踊り』は早くから抜粋演奏が行われ、歌劇本体から独立して国際的に広まった。ロシア国民楽派の理念である民族的素材と色彩的オーケストレーションの結晶と評される。
使用された映画・舞台(該当時)
本来は歌劇舞台の大団円を支える音楽だが、抜粋はバレエ公演や演奏会用舞台でもしばしば上演される。旋律の一部はブロードウェイ・ミュージカル『キスメット』および映画版で「Stranger in Paradise」として転用され、ポピュラーカルチャーにも浸透した。オペラ上演では大規模合唱・舞踊を伴う華やかな場面として観客を魅了し続けている。
現代における評価と影響
本作はオーケストラの定番レパートリーで、合唱と共演する祝祭的プログラムの目玉として重宝される。旋律・リズム・配器の工夫が明瞭なため、音楽学習や解説書でも頻繁に取り上げられる。吹奏楽や室内編成への編曲も多く、演奏機会は広い。録音も豊富で、テンポ設定や合唱の発音、打楽器の扱いなど解釈の違いが聴きどころとなる。
まとめ
劇場性と民族的色彩、明快なフォームを兼ね備えた『ダッタン人の踊り』は、単独でも舞台上でも強い吸引力を放つ。作品の背景を知れば、言葉と合唱、管弦楽の相乗効果がより立体的に響く。まずは合唱付き全曲と管弦楽版の双方を聴き比べ、音色とリズムの妙味を味わいたい。