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モルダウ

  • 作曲: SMETANA BEDRICH FRIEDRICH
#クラシック
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モルダウ - 楽譜サンプル

モルダウ|作品の特徴と歴史

基本情報

モルダウ(原題: Vltava)は、チェコの作曲家ベドルジハ・スメタナが交響詩連作『わが祖国』の第2曲として作曲した管弦楽作品。ボヘミア最大の川ヴルタヴァ(ドイツ語名モルダウ)の源流からプラハ、そしてヴィシェフラドに至る流れを音で描写する。作曲年は1874年。標題音楽でありながら、緻密な構成と旋律美の両立により、コンサートの定番として広く親しまれている。

音楽的特徴と表現

冒頭、2本のフルートが小川の湧き出しを描き、弦の細かなうねりが水流の広がりを作る。やがて提示される主要主題は歌謡的で、民謡「ラ・マンタヴァーナ」に由来する旋律形として知られる。音楽は農民の婚礼の踊り、月光の下での水の精の舞、激しい急流(聖ヨハネの急流)などのエピソードを経て、終盤に『わが祖国』第1曲「ヴィシェフラド」の主題が堂々と再現され、国土と歴史への帰結を象徴する。調性とテンポ、管弦楽法の変化が場面転換を明瞭に支え、情景描写と形式感が巧みに両立している。

歴史的背景

スメタナは1874年に重い耳疾を患い、まもなく聴力を失った。『わが祖国』(1874〜1879)は、チェコ民族意識の高まりの中で生まれ、本曲もその精神を担う。オーストリア=ハンガリー帝国下での文化的自立を志向し、伝承旋律の処理や象徴的主題の活用により、言葉を介さず土地の記憶を語る音楽を目指した。個人的苦難と公共的理念が交差する作品として位置づけられる。

使用された映画・舞台(該当時)

本作は教育現場やテレビ番組のBGM、各種式典で耳にする機会が多いが、特定の映画や舞台での使用について本稿で確認できる具体的作品名は情報不明。地域や時代により用法は異なり、編曲版や抜粋での上演も行われる。

現代における評価と影響

「モルダウ」は今日、世界のオーケストラの主要レパートリーであり、チェコ音楽の象徴的名曲として評価が定着している。演奏では流れの推進感、主要主題の歌い回し、急流部のダイナミクス、終盤の帰還主題の内的高揚が聴きどころ。録音は多数にのぼり、コンサートでも単独で、あるいは『わが祖国』全曲の一部として取り上げられることが多い。教育・教養の文脈でも紹介され、入門曲としての価値も高い。

まとめ

川の旅路を一篇の物語として聴かせる構成、記憶に残る旋律、鮮やかなオーケストレーション。スメタナの『モルダウ』は国民楽派の枠を超えて普遍的な魅力を放ち続ける。初学者にとっての入口であり、表現を磨く演奏家の試金石でもある、再聴に値する名作である。