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Just One Of Those Things

  • 作曲: PORTER COLE
#スタンダードジャズ
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Just One Of Those Things - 楽譜サンプル

Just One Of Those Things|楽曲の特徴と歴史

基本情報

Just One Of Those Things は、作曲家コール・ポーターによる英語詞付きの曲で、ブロードウェイ・ミュージカル「Jubilee」(1935)で初演されたとされるジャズ・スタンダードです。作詞・作曲は同一人物(Cole Porter)。軽妙洒脱な言葉運びと、都会的な感性を湛えたメロディで、アメリカン・ソングブックを代表する一曲として広く知られます。初演時の具体的な歌い手や初出の編成は情報不明ですが、その後多くのジャズ・ヴォーカリストと器楽奏者に取り上げられ、ライヴやスタジオ録音の定番となりました。現在ではヴォーカル、スモール・コンボ、ビッグバンドのいずれでも親しまれ、教育現場やセッションでも頻出のレパートリーです。

音楽的特徴と演奏スタイル

本曲は快活なスウィング・フィールで演奏されることが多く、機知に富む歌詞と流麗な旋律が相互に引き立て合います。ヴォーカルでは短いヴァースを置いたのちコーラスへ入る形態も見られ、器楽ではコーラス部を中心にテンポ良く進行。和声進行はジャズ的な即興に適し、明確なフレーズ感と適度な転回により、ソリストがアイデアを展開しやすい設計です。テンポ設定は中速から速めまで幅広く、ダンス寄りの跳ね感を強調する演奏も、ハーモニーの色彩を味わう中速の解釈も有効。アレンジ次第でシンコペーションやブレイクを活かし、エンディングではタグやフェルマータで余韻を作る手法も一般的です。

歴史的背景

1930年代のブロードウェイ黄金期に生まれた本曲は、作詞・作曲を自ら手がけたポーターの洗練された都会派センスを体現します。大恐慌後の時代に、ウィットとエレガンスで日常を彩るエンターテインメントが求められた文脈と響き合い、上品な諦観や軽やかな達観を描く歌詞が共感を呼びました。劇場音楽としての出自を持ちながら、レコード時代の拡大とともにスタンダード化が進み、ミュージカル・ナンバーがジャズの主要レパートリーへと転化していった典型例の一つに数えられます。

有名な演奏・録音

代表的な名演として、エラ・フィッツジェラルドの「Sings the Cole Porter Song Book」(1956)が広く知られ、クリアな発声とスウィング感で楽曲の魅力を端的に示しました。フランク・シナトラによる1950年代の録音も重要で、フレージングの間合いと語り口の巧みさが手本とされています。さらに、ビリー・ホリデイの成熟した解釈(1957年)では、言葉のニュアンスと情感の深さが際立ちます。器楽ではピアノ・トリオなどによる快活なスウィング・アレンジが定番で、多数のジャズ・ピアニスト、サクソフォニスト、ビッグバンドが取り上げています。

現代における評価と影響

今日でも本曲は、セッションやリサイタルのプログラムで頻繁に選ばれる定番曲です。歌詞のウィット、覚えやすい旋律、即興に乗せやすい和声という三拍子が、初学者のレパートリー拡充から上級者の表現深化まで幅広く貢献。多くの教材・曲集に収録され、発音・ライミング、スウィングのタイム感、コール&レスポンス的なアドリブ構築などの練習題材としても有用です。録音史に刻まれた多彩な解釈が、世代を超えた再創造を促し続けています。

まとめ

Just One Of Those Things は、ブロードウェイ発の洗練とジャズの躍動を兼ね備えた不朽のスタンダードです。軽妙な歌詞と即興に映える設計ゆえに、ヴォーカル、コンボ、ビッグバンドのいずれでも魅力が際立ちます。初演の細部は情報不明な点もあるものの、数多の名演が楽曲のポテンシャルを証明してきました。学習者にとっては表現の引き出しを増やす優良教材であり、実演家にとってはステージを爽快に彩る一曲として、今後も愛奏され続けるでしょう。