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ピアノ協奏曲第2番ラフマニノフ2
- 作曲: RACHMANINOV SERGEJ V

ピアノ協奏曲第2番ラフマニノフ2 - 楽譜サンプル
ピアノ協奏曲第2番ラフマニノフ2|作品の特徴と歴史
基本情報
ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番ハ短調 作品18は、1900〜1901年に作曲され、1901年モスクワで作曲者自身の独奏により初演された。指揮は作曲者のいとこであるアレクサンドル・ジロティ。全3楽章構成(I: Moderato、II: Adagio sostenuto、III: Allegro scherzando)で、演奏時間は約32〜36分。献呈は治療で大きな支えとなった医師ニコライ・ダーリ博士。編成は独奏ピアノと2管編成の管弦楽で、豊麗なロマン派の響きを特徴とする。
音楽的特徴と表現
第1楽章は低音の和音が鐘のように鳴り響く導入で幕を開け、長いクレッシェンドと半音階的進行が緊張を高める。ピアノとオーケストラは対話的に主題を展開し、雄大な歌と推進力が同居する。第2楽章は静謐な夜想曲風で、クラリネットやフルートの旋律をピアノが包み込む。豊かな和声と長いフレーズが郷愁と憧憬を喚起する。終楽章は跳躍や連打、分厚い和音など高度な技巧を要求しつつ、旋律のカンタービレを失わない。循環的な動機処理により楽章間の連関が保たれ、最終的にC長調の輝かしい終結へと至る。
歴史的背景
1897年、交響曲第1番の不評で創作危機に陥ったラフマニノフは、医師でアマチュア音楽家でもあったニコライ・ダーリの催眠療法により自信を取り戻した。本作はその回復の結晶として生まれ、博士に献呈された。初演は成功を収め、作曲者の名声を決定づける転機となる。1900年に第1・第2楽章が先行披露され、翌1901年に全曲が聴衆の前に現れた。出版年は情報不明だが、以後すみやかに各地で演奏され、20世紀の代表的協奏曲として定着した。
使用された映画・舞台(該当時)
第2楽章はデヴィッド・リーン監督『逢びき(Brief Encounter, 1945)』で印象的に使用され、登場人物の内面を象徴する音楽として作品世界を強く規定した。また『七年目の浮気(The Seven Year Itch, 1955)』では、登場人物がこの協奏曲のレコードをかける場面があり、ロマンティックなムードの象徴として引用される。舞台での具体的使用例は情報不明。
現代における評価と影響
本作は今日も人気の高い協奏曲の筆頭で、国際コンクール決勝や主要オーケストラの定番レパートリーである。録音面では、作曲者自身とフィラデルフィア管弦楽団による録音が古典的名盤として知られ、近年ではダニール・トリフォノフ/フィラデルフィア管による全曲録音も高評価を得た。ポピュラー音楽への波及も顕著で、エリック・カルメンのAll by Myself(第2楽章が原型)や、Full Moon and Empty Arms(第3楽章主題に基づく)など、旋律の魅力が幅広い領域で再解釈されている。
まとめ
抒情と劇性、技巧と構築美が高度に統合された本作は、20世紀ロマン派協奏曲の金字塔である。映画やポピュラー音楽にも浸透し、初演以来その魅力は色あせない。初めて触れるなら第2楽章の歌心から、全体像へと聴き進めると本作の真価が見えてくるだろう。