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田園 ベートーベン

  • 作曲: VAN BEETHOVEN LUDWIG
#クラシック
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田園 ベートーベン - 楽譜サンプル

田園 ベートーベン|作品の特徴と歴史

基本情報

ベートーベンの交響曲第6番ヘ長調 Op.68《田園》は、自然への親愛を主題とする五楽章の交響曲。各楽章に標題が付され、物語性を持ちながらも純音楽としても鑑賞される。演奏時間は約40〜45分。編成は弦・木管・金管に加え、第四楽章の嵐でピッコロ、トロンボーン、ティンパニが加勢する。第三〜第五楽章は切れ目なく続く構成で、全体の統一感を高めている。楽章標題は「田舎に到着したときの愉快な感情の目覚め」「小川のほとりの情景」「農民たちの楽しい集い」「雷雨、嵐」「牧人の歌—嵐の後の喜ばしい感謝」。

音楽的特徴と表現

第一楽章は牧歌的な主題が反復と和声の移ろいで広がり、素朴なドローンや穏やかな躍動で田園の空気を描く。第二楽章「小川のほとり」では水のさざめきを思わせる動機が続き、末尾に鳥のさえずりを明示(ナイチンゲール=フルート、ウズラ=オーボエ、カッコウ=クラリネット)。第三楽章は舞曲風のリズムが躍り、素朴な祝祭感を醸成。第四楽章の雷雨では弦の細分化や低弦のうねり、ティンパニと管の強奏が嵐のクライマックスを形作る。第五楽章はF音の持続や素直な旋律で感謝の祈りが満ち、平穏へと収束する。

歴史的背景

作曲は1807〜1808年ごろ。ベートーベンがウィーン近郊で自然の中を散策しながら構想したと伝えられる。初演は1808年12月22日、ウィーンのアン・デア・ウィーン劇場。同日の長大な演奏会で交響曲第5番と並んで披露された。作曲者は本作について、自筆資料で「写実ではなく感情の表現」である旨を明記し、音による自然描写(トーン・ピクチャリング)に留まらず、自然から触発された感情と精神の描出を目指した点を強調している。

使用された映画・舞台(該当時)

本作はディズニー映画『ファンタジア』(1940)で「田園交響曲」として採用され、映像表現とともに世界的な知名度を得た。映画では編曲版が用いられ、楽曲の物語性が視覚的に強調されている。その他の具体的な映画・舞台での使用事例は情報不明。なお、クラシックのコンサート・プログラムや教育的な場面で取り上げられる機会は多い。

現代における評価と影響

《田園》は、交響曲に明示的な標題を与えた先駆的作品として高い評価を受け、後の標題音楽の展開(例:ベルリオーズやリストの潮流)に影響を与えたとされる。今日では、当時の楽器と奏法を踏まえたオーセンティックな解釈から、広いダイナミクスを生かす大編成のアプローチまで、演奏観が多様。自然観や環境意識のテーマとも親和性が高く、教育現場でも導入曲として定着している。

まとめ

自然の情景を通じて人間の感情を描いたベートーベン《田園》は、叙情と構築性が調和した普遍的名作である。五つの楽章が有機的に結びつき、嵐を経て穏やかな感謝へ至るアーチは、聴くたびに新たな発見をもたらす。初めての鑑賞では鳥の描写や嵐のコントラストに注目し、繰り返しの鑑賞で全体の流れや動機の関連を味わうと、作品の魅力がより明確になる。