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威風堂々
- 作曲: ELGAR EDWARD

威風堂々 - 楽譜サンプル
威風堂々|作品の特徴と歴史
基本情報
「威風堂々」は、エドワード・エルガーが作曲した行進曲集「Pomp and Circumstance, Op.39」の通称で、日本では特に第1番ニ長調を指すことが多い。原曲はオーケストラのための器楽曲で、行進—トリオ—再現という定型をとり、演奏時間は約5〜6分。堂々たるファンファーレと歌うようなトリオ旋律が核で、吹奏楽・オルガン編曲も広く普及する。
音楽的特徴と表現
冒頭は力強い付点リズムとブラスのユニゾンが気品と推進力を生む。対照的にトリオでは弦を中心とした広々とした旋律が現れ、和声は明快で、クライマックスに向けたダイナミクスの積み上げが効果的である。テンポは過度に速めず、歩度と重心を保つ解釈が主流。金管のアーティキュレーション、打楽器のアクセント、弦のレガートなど、各セクションの音色の対比で「威厳」と「祝祭感」を両立させるのが聴きどころ。
歴史的背景
第1・第2番は1901年に初演され、その後も作曲者は1930年までに計5曲を完成。第1番のトリオ旋律は1902年の戴冠式頌歌に転用され、A.C.ベンソンの歌詞が付けられて「Land of Hope and Glory」として独立の歌としても親しまれた。20世紀英国のナショナル・イベントと密接に結びつき、プロムスなどの公共コンサートで繰り返し演奏されて定着した。
使用された映画・舞台(該当時)
映像作品では、ディズニーのアニメ映画『ファンタジア2000』で用いられ、旋律が広く再認識された。舞台・式典面では、英国の「ラスト・ナイト・オブ・ザ・プロムス」で観客の合唱とともに盛り上がる恒例曲として知られ、学校の入学式・卒業式などフォーマルな場面でも頻繁に使用される。
現代における評価と影響
今日「威風堂々」は、華やかさと晴れやかさを兼ね備えた象徴的マーチとして、世界のオーケストラやブラスバンドの定番曲であり続ける。録音は作曲者自身の指揮盤から名匠たちまで多彩で、ゆったり歌わせるものから引き締まったテンポまで解釈も幅広い。歌詞付き版の受け止め方が話題になることもあるが、器楽版は儀礼音楽としての普遍性で高く評価される。
まとめ
堂々たる行進句と昂揚感あふれるトリオ旋律によって、祝典の空気を一瞬で作り出す稀有の名作。エルガーの職人的オーケストレーションと端正な形式美が光る「威風堂々」は、演奏会でも式典でも、その名の通りの風格を今なお放ち続けている。