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ベートーベン悲愴 第三楽章
- 作曲: VAN BEETHOVEN LUDWIG

ベートーベン悲愴 第三楽章 - 楽譜サンプル
ベートーベン悲愴 第三楽章|作品の特徴と歴史
基本情報
「悲愴」ソナタはベートーベンのピアノ・ソナタ第8番ハ短調Op.13。第3楽章は終楽章で、標題はRondo: Allegro。器楽編成はピアノ独奏、歌詞は存在しない(器楽作品)。ロンド形式を基調に、主題回帰と性格の異なる挿入部が交互に現れ、全体の推進力を担う。発表年は1799年(初版)。献呈はカール・フォン・リヒノフスキー侯。演奏時間は解釈やテンポにより幅がある。原題の“Grande Sonate Pathétique”がのちの日本語題「悲愴」の由来である。
音楽的特徴と表現
終楽章は歯切れよく躍動的な主題を核とするロンド(概ねABACA+コーダ)。ハ短調の主題は短い動機の反復、明確なアクセント、スフォルツァンドに富み、推力を生む。挿入部では主として変ホ長調や変イ長調など親族調へ転じ、レガートの歌わせ方や和声色彩の対比が聴きどころ。主題回帰のたびに音域・テクスチュア・ダイナミクスが変化し、緊張感が高まる。演奏面では、左手のパッセージと右手旋律のバランス、スタッカートとレガートの明確な弁別、過度なペダルを避けた和声の透明度が鍵。終結では駆け抜けるスケールと和音が劇的に締めくくる。
歴史的背景
本作は1797〜1798年頃に作曲され、1799年に初版刊行。ウィーン初期のベートーベンがモーツァルトやハイドンの伝統を踏まえつつ、劇性と構成感を前面化した時期の代表作である。初版表紙に“Pathétique”と記されたことから、感情の緊張と崇高感をもつ作品として知られるようになった。第3楽章は全体のドラマを締めるフィナーレで、緊迫したハ短調の性格を保ちつつ、挿入部で表情を開放して全曲の弧を完結させる。献呈はパトロンであったリヒノフスキー侯。
使用された映画・舞台(該当時)
第3楽章が特定の映画・舞台でどのように使用されたかについて、確定した情報は情報不明。なお、同ソナタでは第2楽章が映像作品で引用される例がしばしば見られるが、本稿対象である第3楽章の具体的な使用例・作品名は情報不明である。
現代における評価と影響
「悲愴」はピアノ独奏レパートリーの定番で、第3楽章は技巧と構成感を同時に試す舞台として重視される。コンサートプログラムやコンクール、教育現場で頻繁に取り上げられ、多数の録音が流通。アシュケナージ、ブレンデル、ポリーニ、内田光子らの全集・名録音にも含まれ、解釈の多様性が鑑賞の楽しみを広げている。強靭なリズム処理と明晰なフレージング、ダイナミクスの階層づけが評価のポイントとなる。
まとめ
ベートーベン「悲愴」第3楽章は、鋭い主題と抒情的挿入部の対比がもたらす劇的なロンド。1799年の初版以来、終楽章として全曲の弓形を閉じる役割を担い、今日も演奏会・教育・録音で中核的な地位を保つ。形式の明瞭さと感情の張力を両立させる点にこそ魅力があり、聴き手には推進力の快感と和声色彩の移ろい、演奏者には制御された表現力が求められる。