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ニュルンべルクのマイ スタージンガー
- 作曲: WAGNER RICHARD WILHELM

ニュルンべルクのマイ スタージンガー - 楽譜サンプル
「ニュルンべルクのマイ スタージンガー |作品の特徴と歴史」
基本情報
リヒャルト・ワーグナーが自ら台本も手がけた全3幕の楽劇。舞台は16世紀のニュルンベルク、歌のギルド“マイスタージンガー”を中心に、若き騎士ワルターの創意と伝統のせめぎ合い、ハンス・ザックスの人間味が描かれる。初演は1868年6月21日、ミュンヘン王立宮廷歌劇場(現バイエルン国立歌劇場)。指揮はハンス・フォン・ビューロー。第1幕前奏曲は独立曲としても広く親しまれる。主な人物はザックス、ワルター、エーファ、ベックメッサーなど。
音楽的特徴と表現
ワーグナー特有の連続的な楽劇様式を取りつつ、喜劇性と市民的温かさが前面に出る稀有の作品。ライトモティーフが緻密に網の目を成し、ザックスやマイスタージンガー、賞の歌などを象徴する動機が場面ごとに変容する。コラール風旋律と重厚な和声、精巧な対位法、分厚い合唱が祝祭感を高める一方、室内楽的な会話書法も効果的。マイスタージンガー伝統の“バール形式(AAB)”が作中の歌作法に反映され、伝統と革新のテーマが音楽そのものに刻まれている。長大ながらモチーフの回帰が聴取の羅針盤となる。
歴史的背景
1840年代に構想が芽生え、1860年代に本格的な作曲が進み、1867年に完成。トリスタンとイゾルデの後期語法を継ぎつつ、より明朗な人間喜劇へと転じた。バイエルン王ルートヴィヒ2世の後援下、ミュンヘンでの上演が実現した。16世紀ニュルンベルクの市民文化と職人精神への関心、芸術規範と個の想像力の対話が核にある。
使用された映画・舞台(該当時)
初演は前述のとおりミュンヘン王立宮廷歌劇場。以後、ドイツ語圏を中心に主要歌劇場のレパートリーに定着し、バイロイト音楽祭でも重要演目として上演されてきた。第1幕前奏曲はコンサートプログラムの定番で、式典的な場でも演奏機会が多い。映画での著名な使用例は情報不明。
現代における評価と影響
ワーグナーの成熟期で唯一の本格的喜劇として、作曲家の幅の広さと合唱・オーケストラ書法の極致を示す作品と評価される。歌手には長大な台詞性と高度なドイツ語ディクション、合唱陣には精密なアンサンブルが求められ、歌劇場の総合力を測る試金石となる。前奏曲や第3幕フィナーレは単独でも演奏され、今日も世界各地で上演が続く。
まとめ
ニュルンベルクのマイスタージンガーは、伝統と革新の緊張をユーモアと温かな人間ドラマで包み込む傑作。初めて触れるなら前奏曲や第3幕の祝祭的場面から入り、モチーフの織り成す構造に耳を澄ますと全体像が鮮明になる。映画での使用情報は現時点で情報不明だが、舞台芸術としての生命力は不変である。