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Maiden Voyage

  • 作曲: HANCOCK HERBIE
#スタンダードジャズ
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Maiden Voyage - 楽譜サンプル

Maiden Voyage|楽曲の特徴と歴史

基本情報

「Maiden Voyage」は、ピアニスト/作曲家ハービー・ハンコックが1965年に発表した同名アルバムのために書かれたインストゥルメンタル曲。ブルーノート期を代表する名曲で、歌詞は存在せず、現在はジャズ・スタンダードとして世界中のジャム・セッションや教育現場で取り上げられている。初演はハンコックのクインテットによるスタジオ録音で、以後、無数の演奏家にレパートリーとして受け継がれてきた。

音楽的特徴と演奏スタイル

海のイメージを喚起するサウンドが核。サスフォーを多用した持続的な和声、ペダル・ポイント、四度堆積的ヴォイシングにより、静的でありながら推進力のあるモーダル空間を生む。テーマは短い動機の反復と緩やかな上昇感で設計され、ソロは各モード上でのスケール的展開が中心。テンポは中庸で、トニー・ウィリアムスとロン・カーターのリズムが広い間合いを保ち、ハンコックのピアノとブラスが呼応する。初演ではフレディ・ハバードとジョージ・コールマンが参加し、音色の対比が“航海”の情景を立体的に描く。

歴史的背景

1960年代半ば、ハンコックはマイルス・デイヴィスの第二期クインテットに籍を置き、先鋭的なハーモニーとリズムの実験を進めていた。本作はその探求を自身のリーダー作に落とし込み、ポスト・バップ以降の語法を一般化した作品群の中心に位置づけられる。アルバム全体が海をテーマとするコンセプトを持ち、「Maiden Voyage」はその象徴曲として聴かれてきた。

有名な演奏・録音

基準となるのは1965年のオリジナル・テイク。以後、多くのライブ盤や教則的音源で繰り返し録音され、コンボのみならずビッグバンド向けの編曲も多数制作されている。標準曲集(いわゆるReal Book)への収載により、世界中の学生やプロが共通言語として扱えるレパートリーとなった点も重要である。

現代における評価と影響

本曲は、サスティンド・ハーモニーとモーダル志向を実地で学べる教材として価値が高い一方、印象的な主題により一般リスナーにも親しまれる存在である。和声運動や音域設計、ダイナミクスの対比は今日の作編曲にも示唆を与え、新主流派からネオ・ソウルやフュージョンまで幅広く影響を及ぼしている。

まとめ

「Maiden Voyage」は、簡素な素材と高度なアンサンブル設計で深い情景を生む、ジャズ史の到達点の一つ。初学者の定番曲でありながら解釈の余地が広く、現在も演奏現場で更新され続けるモーダル・スタンダードである。