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The Last Time I Saw Paris

  • 作曲: KERN JEROME
#洋楽ポップス#スタンダードジャズ
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The Last Time I Saw Paris - 楽譜サンプル

The Last Time I Saw Paris|楽曲の特徴と歴史

基本情報

The Last Time I Saw Parisは、Jerome Kernが作曲し、Oscar Hammerstein IIが作詞した1940年のポピュラー・ソング。のちにジャズ・スタンダードとして定着しました。抒情性の高いバラードで、街への哀惜を静かに描くテキストと、品位ある旋律・和声が結びついた名曲として知られます。映画『Lady Be Good』(1941年)で使用され、同年のアカデミー賞歌曲賞を受賞。以後、多くの歌手・ジャズ奏者に歌い継がれています。

音楽的特徴と演奏スタイル

テンポはスロー〜ミディアムのバラードが基本。柔らかな旋律線に対し、Kernらしい内声の動きやセカンダリー・ドミナントを活かした和声が彩りを与えます。32小節型のスタンダードに典型的な構成をとる版が多く、序奏(ヴァース)を自由テンポで置き、コーラスで拍を明確にする演奏が好まれます。ジャズではリハーモナイズや転調で陰影を深めつつ、歌詞の語感を生かしたフレージングが要。伴奏は薄いパッドと対旋律で空間を作ると効果的です。

歴史的背景

本作は1940年、第二次世界大戦下でパリ陥落の報に触発されて生まれました。Hammersteinの詞は、活気に満ちた都市の記憶と喪失感を重ね、戦時下の世界に広く共感を呼びます。翌年、映画『Lady Be Good』で採用されアカデミー賞歌曲賞を受賞。ただし、もともと映画のために書かれた曲ではなかったため、この受賞は議論を呼び、後年「映画のために新たに書かれた楽曲」に限定する規定変更の一因となりました。戦時の時代精神を映す作品としても重要です。

有名な演奏・録音

発表直後から複数の歌手が録音し、ラジオを通じて人気を博しました。映画版での歌唱者の詳細は情報不明ですが、スクリーンでの露出がさらに普及を後押し。ジャズ・ボーカルではElla FitzgeraldがKern作品集の一曲として録音し、端正な解釈で評価されています。戦後も多くの歌手・アレンジャーがレパートリーに採り入れ、室内楽的な小編成からオーケストラまで幅広い編成で親しまれています。

現代における評価と影響

The Last Time I Saw Parisは、アメリカン・ソングブックの抒情的名品として位置付けられ、ジャズ・クラブやコンサート、音楽教育でも取り上げられます。歌詞の物語性と洗練された和声が、解釈の余地と再演性を担保し、世代やジャンルをまたいだ継承を可能にしています。1954年には同名映画のタイトルにも採用され、曲名そのものが文化的記号として流通。現在も録音や配信で安定した支持を保っています。

まとめ

戦時下の哀惜を、気品あるメロディと精緻な和声で結晶化した本作は、映画受賞のエピソードも含め20世紀ポピュラー史の重要作です。演奏では言葉の情感とハーモニーの陰影を丁寧に扱うことが鍵。歴史的背景を踏まえるほど、静かな力を帯びるバラードとしての魅力が際立ちます。