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Let's Do It

  • 作曲: PORTER COLE
#洋楽ポップス#スタンダードジャズ
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Let's Do It - 楽譜サンプル

「Let's Do It|楽曲の特徴と歴史」

基本情報

コール・ポーター作の「Let's Do It(副題:Let's Fall in Love)」は、1928年のブロードウェイ・ミュージカル『Paris』で初披露された名曲。洒脱な言葉遊びと都会的な和声感で、のちにジャズ・スタンダードとして定着した。原題以外の邦題は情報不明だが、一般に“恋をしよう”という含意で認知されている。舞台発のポピュラーソングがジャズ界で長命なレパートリーへ発展した代表例である。

音楽的特徴と演奏スタイル

AABA型の32小節ソング・フォームに基づき、ミディアム・テンポのスウィングからボサノヴァ、バラードまで幅広く解釈される。転調や副属和音を織り込んだ流麗な進行に、巧妙なライムとダブル・ミーニングの歌詞が重なる点が魅力。ボーカルは語り口のニュアンス、器楽演奏ではライトなスウィング感と間合いが鍵になる。コール・ポーター特有の気品とウィットが、シンプルなグルーヴの中で映える設計だ。

歴史的背景

禁酒法時代のニューヨークで花開いたレビュー文化の中、ポーターは社交界的な機知とエレガンスを舞台音楽に持ち込んだ。本曲は、その代表的成果の一つとして、恋愛をめぐる洒落た比喩を列挙するスタイルで観客を魅了。初演後まもなくダンスバンドやジャズ・ミュージシャンに広がり、時代のムードを体現するナンバーとして愛唱された。以降、グレイト・アメリカン・ソングブックの重要レパートリーに位置づけられている。

有名な演奏・録音

初演では主演のアイリーン・ボルドーニが歌い、1930年代以降は多数の録音が生まれた。中でもエラ・フィッツジェラルドが『Cole Porter Song Book』で示した洗練された解釈は、ジャズ・ボーカルにおける決定的な参照点として知られる。インストではスウィング~モダンまで幅広いアプローチが可能で、スモール・コンボやビッグバンド編成でも定番。個々の代表録音の網羅は情報不明だが、名唱・名演の蓄積は非常に厚い。

現代における評価と影響

大胆で上品なウィットに富む歌詞と、ジャズ的に発展させやすいフォームの両立が、今日でも選曲され続ける理由である。セッションでも扱いやすく、アレンジャーはテンポ変更やハーモニーの再構築で個性を出しやすい。ポピュラーカルチャーにおいても“誰もが恋に落ちる”という象徴的モチーフを持つ曲として引用性が高く、教育現場ではスタンダード入門曲としてもしばしば取り上げられている。

まとめ

「Let's Do It」は、舞台発の流行歌からジャズ・スタンダードへと昇華した20世紀アメリカ歌の典型例。機知に富む言葉と洗練された音楽が相互に引き立て合い、時代やスタイルを超えて演奏者の創造性を刺激し続ける。一見軽やかな恋の歌でありながら、アレンジと解釈の余地が大きく、聴き手にも演奏者にも発見をもたらす。今後も長く歌い継がれていく普遍的レパートリーである。