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Long Ago

  • 作曲: KERN JEROME
#洋楽ポップス#スタンダードジャズ
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Long Ago - 楽譜サンプル

Long Ago|楽曲の特徴と歴史

基本情報

Long Agoは、作曲家ジェローム・カーンの代表的ナンバーの一つとして広く知られ、一般にはLong Ago (and Far Away)の表記で流通している。作詞はアイラ・ガーシュウィン、初出は1944年の映画Cover Girl。以降、アメリカン・ソングブックの重要曲として多くの歌手・演奏家に取り上げられ、ポピュラーとジャズ双方のレパートリーに定着した。形式は標準的な32小節AABAで、歌詞の全体引用は避けるが、遠い昔の記憶と憧憬をテーマにした言葉がメロディに寄り添う。

音楽的特徴と演奏スタイル

旋律は滑らかな順次進行と程よい跳躍を交え、カーンらしい抒情性を備える。和声はII–V進行を軸に、トニックへの安定回帰とサブドミナントの色彩を巧みに交錯させるため、ボーカルは叙情的バラード、インストはミディアム・スイングやボサ・ノヴァでも映える。イントロは自由テンポのルバートで歌を導入し、Aセクションは息の長いフレージング、ブリッジではダイナミクスを拡張するのが定番。アレンジでは裏コードや代理和音の置換、終止形を遅延させるテンション付与が効果的だ。

歴史的背景

本曲は第二次世界大戦期のハリウッド黄金期に生まれ、映画Cover Girlで初披露された。戦時下の不安の中でも希望とロマンスを求める大衆感情に寄り添い、公開当時から人気を博す。アカデミー賞歌曲賞にもノミネートされ、作曲家カーンと作詞家ガーシュウィンの名コンビが確立した洗練された作風を示す一例として、ブロードウェイ/ハリウッド歌曲の文脈で重要な位置を占める。

有名な演奏・録音

フランク・シナトラ、ビング・クロスビー、エラ・フィッツジェラルド、サラ・ヴォーンなどの名唱が知られ、ジャズではチェット・ベイカーらが印象的な解釈を残している。ピアノ・トリオやギター・デュオ編成でも定番で、テンポや調性の選択の自由度が高く、シンガーはリリックの明瞭度とロングトーンのコントロール、器楽奏者はAABA各部のコントラストを生かしたコーラス展開が聴きどころとなる。

現代における評価と影響

今日でもスタンダード集やセッションの常連曲であり、音大やジャズ教育の教材としても扱われる。歌詞の普遍性と旋律の美しさ、和声の発展余地が共存するため、伝統的ヴォーカルからモダン・ジャズ、室内楽的アレンジまで横断的に演奏される。配信時代においても再録が絶えず、映画音楽由来のスタンダードが持つ越境性を示す好例として評価が高い。

まとめ

Long Agoは映画発の名曲として誕生し、ジャズ・スタンダードとして普遍化した。AABAの明快な器楽・歌唱設計、豊かな和声語彙、解釈の幅が長寿の秘訣である。初学者には原曲の構造理解、上級者には和声置換とダイナミクス設計の工夫が鍵となるだろう。