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Prelude To A Kiss
- 作曲: ELLINGTON DUKE

Prelude To A Kiss - 楽譜サンプル
Prelude To A Kiss|楽曲の特徴と歴史
基本情報
「Prelude To A Kiss」は、作曲デューク・エリントン、作詞アーヴィング・ゴードン/アーヴィング・ミルズによる1938年の作品。ジャズ・スタンダード化した叙情的バラードで、歌入り・器楽ともに広く演奏される。原題のとおり“キスの前奏曲”というロマンティックな趣をもつ。
音楽的特徴と演奏スタイル
最大の魅力は、半音階的な内声進行と豊かな和声。II-V進行に依存しない転調感が連続し、広い音域の旋律が長いレガートで歌われる。テンポはスローバラードが基本で、ピアノのルバート序奏から入るアレンジも定番。歌では正確な音程コントロール、器楽では息の長いフレージングとダイナミクス設計が要点となる。
歴史的背景
スウィング黄金期の1930年代後半、エリントンはダンス音楽の枠を越えた高度な和声語法を模索していた。本作はその成果のひとつで、同時期のバラード群と並び、楽団の芸術性を示す代表曲となった。楽団による初期録音を起点に、歌詞付きの出版も行われ、ステージとレコードの双方で親しまれていく。
有名な演奏・録音
代表的録音として、エリントン楽団による1930年代の音源に加え、アルトサックスのジョニー・ホッジスをフィーチャーした名演が知られる。歌ものではエラ・フィッツジェラルドが『エリントン・ソングブック』で繊細に表現し、サラ・ヴォーンも深い響きで録音。以後、数多の歌手・ピアニスト・サクソフォン奏者がレパートリーに加えてきた。
現代における評価と影響
現在もジャム・セッションや音大の教材で定番。複雑な和声運びと旋律の跳躍は、アドリブのガイドトーン把握やボイスリーディングの訓練に最適とされる。ライヴでは静謐なバラード・セットの核として配置されることが多く、配信時代でも新録音が途切れない。スタンダードの中でも“ハーモニーで語る”曲の模範例として評価が定着している。
まとめ
「Prelude To A Kiss」は、甘美さと高度なハーモニーを併せ持つエリントン流バラードの到達点。歌でも器楽でも、その構造を理解し丁寧に歌い上げるほど魅力が開く。時代を超えて演奏され続ける理由は、ロマンティックな情感と作曲的精緻さが見事に両立しているからだ。