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Lovely to Look At
- 作曲: KERN JEROME

Lovely to Look At - 楽譜サンプル
Lovely to Look At|楽曲の特徴と歴史
基本情報
「Lovely to Look At」は、ジェローム・カーン作曲による1935年公開の映画「Roberta」で初披露された楽曲。作詞はドロシー・フィールズとジミー・マクヒュー。1952年のMGM映画「Lovely to Look At」(「Roberta」の再映画化)でも重要曲として扱われ、以後はアメリカン・ソングブックを代表するジャズ・スタンダードとして定着した。第8回アカデミー賞で主題歌賞にノミネートされたことでも知られる。
音楽的特徴と演奏スタイル
穏やかな抒情性と上品な旋律線が核。ロマンティックな歌詞を支える滑らかな和声進行はボーカルにもインストにも適し、バラードからミディアム・スウィングまで幅広く演奏される。前奏にルバートを置き、主部でテンポを定める解釈が定番。リハーモナイズの余地も大きく、テンションを活かしたモダンなヴォイシングや、コール&レスポンスを使うアレンジとも相性が良い。
歴史的背景
カーンはオペレッタ的な優美さとジャズの語法を洗練して融合した作曲家で、本曲はその美点を端的に示す。ハリウッド黄金期のミュージカル制作と、ブロードウェイ出身作家の映画進出を象徴する存在であり、映画「Roberta」の成功とともに旋律美が一般聴衆に浸透。戦後も再映画化や数多のカヴァーを通じて普及し、ステージからラウンジ、レコーディングまで幅広い場面で歌われ続けた。
有名な演奏・録音
代表的録音には、エラ・フィッツジェラルドの『Jerome Kern Song Book』(1963、ネルソン・リドル編曲)や、オスカー・ピーターソン・トリオ『The Jerome Kern Song Book』(1959)が挙げられる。これらは旋律の気品とハーモニーの柔軟性を明快に示し、後続の解釈の基準となった。映画「Roberta」(1935)および再映画化「Lovely to Look At」(1952)での使用も、曲の知名度を決定づけた要因である。
現代における評価と影響
今日では“グレイト・アメリカン・ソングブック”の重要レパートリーとして、ジャズ教育やセッション、リサイタルの定番に数えられる。繊細なメロディは歌手のフレージング解釈を映し出し、伴奏者には声部整理とダイナミクス設計の妙が試される。映画音楽とジャズを橋渡しする教材的価値も高く、編曲者にとってもオーケストレーションやリードシート作成の指針を与える楽曲である。
まとめ
「Lovely to Look At」は、映画発のロマンティックな名旋律がジャズ・スタンダードとして成熟した稀有な例。気品ある構造が時代を超えて機能し、世代を問わず演奏者と聴衆の想像力を喚起し続ける。出自や名演を押さえたうえで楽曲の語法を学べば、解釈の幅はさらに広がるだろう。