Midnight in Moscow
- 作曲: SOLOVEV SEDOJ VASILIJ PAVLOVICH

Midnight in Moscow - 楽譜サンプル
Midnight in Moscow|楽曲の特徴と歴史
基本情報
Midnight in Moscowは、ロシアの作曲家ソロヴィヨフ=セドイ(Vasily Solovyov‑Sedoi)が手がけた名曲『Подмосковные вечера(モスクワの夜)』を基にしたタイトルで、英語圏では主にジャズ・アレンジ版を指す呼称として定着しました。原詞はミハイル・マトゥソフスキー。1955年に作曲され、1956年に録音が広まり、1957年のモスクワでの国際フェスティバルを契機に国際的な知名度を獲得。1961年にはケニー・ボール&ヒズ・ジャズメンが「Midnight in Moscow」として発表し、世界的ヒットとなりました。
音楽的特徴と演奏スタイル
特徴は、静謐で叙情的な旋律線と、シンプルで歌心のある和声進行。原曲の哀愁あるメロディは、トラッド・ジャズの2ビートやスウィング感にも自然に馴染み、テンポはバラードから中庸まで幅広く選択されます。ケニー・ボール版ではトランペットを主旋律に据え、クラリネットやトロンボーンが応答するコール&レスポンス、リズムセクション(バンジョー、ベース、ドラム)による軽快な推進力が印象的。アドリブは旋律の輪郭を生かしつつ、コーラスごとにダイナミクスを段階的に高める手法が定番です。
歴史的背景
本曲は1955年に誕生し、1956年にヴラジーミル・トローシンの歌唱で知られるようになりました。1957年の第6回世界青年学生祭典で国内外に広がり、その後、冷戦期の文化交流を象徴する楽曲の一つとして受容されます。英題の“Midnight in Moscow”は、1961年に英国のトラッド・ジャズ・リヴァイバルの波に乗ったケニー・ボール版の成功で広く普及。翌1962年には米国でも大ヒットし、ジャズ・レパートリーとしての地位を確立しました。
有名な演奏・録音
最も著名なのは、ケニー・ボール&ヒズ・ジャズメンによる1961年の録音で、英国と米国の両チャートで上位を記録したことで国際的認知が決定づけられました。原曲側では、ヴラジーミル・トローシンの録音が初期の代表例として挙げられます。その後、伝統的ジャズ編成からビッグバンド、室内アンサンブルまで多彩な形態で録音が重ねられ、楽器編成やテンポ、イントロ/エンディングの処理に各アーティストの個性が表れています。
現代における評価と影響
今日、Midnight in Moscowはトラッド系のセッションで親しまれる定番曲であり、入門者にも取り組みやすい旋律と、表現力で差が出る奥深さを併せ持つ教材的価値でも評価されています。国境を越えて広まった背景から、コンサートのプログラムで“歌心を伝えるインスト曲”として配置されることも多く、原曲『モスクワの夜』の文化的記憶を継承しつつ、ジャズの自由な解釈が共存する稀有なレパートリーとして位置づけられています。
まとめ
ソロヴィヨフ=セドイ作曲の美しい旋律を核に、Midnight in Moscowはトラッド・ジャズの語法で再生され、国際的な名曲へと成長しました。叙情性とアドリブの余地が高い次元で両立し、歴史的にも文化的にも意味深い一曲です。原曲の魅力を尊重しながら各奏者の声を映し出せるため、今後も定番として演奏され続けるでしょう。