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Moonlight Cocktail
- 作曲: ROBERTS C LUCKEYTH

Moonlight Cocktail - 楽譜サンプル
Moonlight Cocktail|歌詞の意味と歴史
基本情報
Moonlight Cocktailは、作曲Luckey Roberts(表記: ROBERTS C LUCKEYTH)、作詞Kim Gannonによる1941年のポピュラー・ソング。スウィング時代を代表するバラードで、グレン・ミラー楽団の録音(1942、ヴォーカル:レイ・エバリー&ザ・モダネアーズ)が決定版として知られる。曲名どおり夜とカクテルをモチーフにした歌もので、テンポはゆったりとしたスロー・フォックストロット。
歌詞のテーマと意味
歌詞は、シェイカー、砂糖、ミックスといったバーテンダーの手順を恋の作法に重ね、月明かりの下で二人の距離がほどけていく情景を描く。直接的な表現を避けた上品な比喩が魅力で、ほのかな甘さと微かな苦みを併せ持つ“カクテル”が、成熟した恋の駆け引きのメタファーとして機能している。官能性よりも洗練を志向する語彙選びが、スウィング期の都会的ムードを際立たせる。
歴史的背景
旋律の原型は、ロバーツが1910年代に書いたピアノ曲“Ripples of the Nile”とされ、テンポを落とし歌ものに仕立てて誕生した。第二次大戦期のアメリカで、戦時下の不安をひととき忘れさせる洗練された娯楽として受け入れられ、グレン・ミラーの盤は全米で大ヒット。ラジオやダンスホールで幅広く楽しまれ、ビッグバンド・ボーカルの一典型として定着した。
有名な演奏・映画での使用
最も著名なのはグレン・ミラー楽団盤で、クラリネット主導の柔らかなアンサンブルとコーラスの重なりが象徴的。レイ・エバリーの穏やかな歌唱とザ・モダネアーズのハーモニーが曲の甘美さを一層引き立てる。ほかにも複数のビッグバンドや歌手が取り上げているが、網羅的な録音リストは情報不明。映画やドラマでの使用については確証ある出典が見当たらず、現時点では情報不明。
現代における評価と影響
大戦期ポピュラーの典型として、ビッグバンド再評価の文脈でしばしば参照される。ゆるやかなスイング感と耳なじみのよい旋律は、現在もスロー・ダンスやラウンジ系の選曲に適し、アマチュアからプロまで幅広い奏者に愛奏される。ロマンスを洒脱に描く作詞法は、後年の“カクテル”や夜景を題材にしたポップスにも通底する美学を示している。
まとめ
Moonlight Cocktailは、月光とカクテルのイメージを巧みに結び、洗練された都会的ロマンスを描いた名曲。グレン・ミラー盤を入口に、作曲家ロバーツのピアノ作品とのつながりにも耳を澄ますと、旋律の源流からポピュラーへ至る変遷が見えてくる。歌詞・演奏ともに時代を超える魅力を持ち、スウィング黄金期のエッセンスを現在に伝える一曲だ。