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My Cup Runneth Over
- 作曲: JONES TOM,SCHMIDT HARVEY

My Cup Runneth Over - 楽譜サンプル
My Cup Runneth Over|歌詞の意味と歴史
基本情報
「My Cup Runneth Over」は、Broadwayミュージカル『I Do! I Do!』(1966年初演)に収められたバラード。音楽はHarvey Schmidt、歌詞はTom Jones(米国の作詞家)によるコンビで、同コンビは『The Fantasticks』でも知られる。本曲は劇中で夫婦の濃やかな愛情と感謝を静かに讃える重要曲として位置づけられ、のちに多くの歌手により独立したスタンダードとしても歌われた。特にEd Amesによる1967年の録音で広く一般に知られるようになり、ミュージカル発のポップ・バラードとして定着している。曲名の「My cup runneth over」は旧約聖書詩篇の表現に由来し、「満ちあふれる恵み・喜び」を象徴する語として広く認知されている。
歌詞のテーマと意味
歌詞の核にあるのは、日常の小さな出来事の積み重ねの中で育まれる伴侶への深い感謝と充足感である。大仰なドラマではなく、静かな語り口で“今ここにある幸せ”を確かめる視点が貫かれ、長年を共にした関係の尊さが浮かび上がる。宗教的由来の比喩は登場するが、説教的ではなく普遍的な愛のメタファーとして機能し、世代や文化を超えて受け入れられてきた。旋律は穏やかで、息の長いフレーズが感情のうねりを丁寧に支え、言葉の温度感を損なわずに余韻を残す構造になっている。
歴史的背景
1960年代のブロードウェイでは、壮大な群集劇だけでなく、少人数で親密な人間関係を描く作品も支持を集めた。『I Do! I Do!』は二人芝居の形式で、結婚生活の始まりから歳月を経るまでを連作的に描く構成を採る。本曲はその中核をなす抒情歌として、夫妻の内面を音楽的に照射した。SchmidtとJonesの作風は、親しみやすい旋律と言葉の呼吸を大切にする点に特色があり、舞台の文脈を離れても伝わる普遍性が、本曲のスタンダード化に寄与した。1966年の初演を起点に数多くのリバイバルやコンサートで取り上げられ、時代を超えてレパートリーに残り続けている。
有名な演奏・映画での使用
レコードとしてはEd Amesの1967年のシングルが特に知られ、その温かな低音とアレンジが楽曲の魅力を広く伝えた。以降、さまざまな歌手がアルバムやコンサートで取り上げ、ポップ/イージーリスニングの文脈でも親しまれている。舞台版『I Do! I Do!』のキャスト録音も、作品の文脈で聴く上で重要な資料と言える。一方、映画での顕著な使用例については情報不明。テレビのバラエティやコンサート・スペシャルでの歌唱は散見されるが、詳細な一覧は情報不明である。
現代における評価と影響
今日では、結婚や長年のパートナーシップを讃える曲として安定した人気を保ち、ショー・チューン系のスタンダードとして歌い継がれている。過度に技巧を誇示せず、言葉と旋律を丁寧に届ける解釈が重視されるため、シンガーの表現力が試されるレパートリーでもある。配信時代になってもキャスト録音や往年のシンガーによるカバーが継続的に聴取され、プレイリストでも定位置を占める。宗教的語彙に依りながらも、普遍的な愛のメッセージに焦点がある点が、文化圏を越える受容の鍵となっている。
まとめ
「My Cup Runneth Over」は、ミュージカル由来の抒情性とポップ・バラードの親しみやすさを兼ね備えた一曲である。SchmidtとJonesの職人的な筆致によって、人生の機微と感謝が簡潔に結晶化され、舞台を離れても輝きを放ち続ける。劇中曲としての機能性と独立曲としての普遍性、その両立こそが、時代を超える価値の源泉だと言える。