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My Man

  • 作曲: YVAIN MAURICE
#洋楽ポップス
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My Man - 楽譜サンプル

My Man|楽曲の特徴と歴史

基本情報

My Man(原題: Mon Homme)は、フランスの作曲家モーリス・イヴァン(Maurice Yvain)が1920年に発表した楽曲。仏語詞はジャック・シャルルとアルベール・ウィルメッツ、英語詞はチャニング・ポロックにより改作され、のちに英語圏で広く親しまれた。歌詞付きのバラードだが、ジャズ界で定番化し現在はジャズ・スタンダードとして扱われる。タイトル通り恋人への執着と矛盾した心情を歌う作品で、情感豊かな歌唱を前提とした設計が際立つ。

音楽的特徴と演奏スタイル

情念を湛えたトーチ・ソングの典型で、自由なルバートの語り口から始まり、ゆったりした4ビートへ移行する解釈が一般的。ドラマティックな旋律線と豊かな和声進行が特徴で、ブレスの置き方やダイナミクスの対比が表現の鍵となる。ヴォーカルは語りと歌の境界を行き来し、間合いとサスティンで緊張感を醸成するアプローチが好まれる。ピアノの経過和音やホーンの対旋律が感情の昂揚を支え、エンディングで頂点を迎える構成が定番である。

歴史的背景

初演はパリのレビューで、ミスティンゲットが歌い大成功を収めた。翌1921年にはファニー・ブライスが米国のジーグフェルド・フォリーズで取り上げ、英語版“My Man”が一躍ヒット。ヨーロッパのシャンソンがブロードウェイとジャズ・シーンへ流入していく時代性を映し、楽曲は国境と言語を越えて受容された。以降はキャバレーやクラブ文化の重要なレパートリーとして生き続け、女性歌手を中心に多様な解釈が蓄積された。

有名な演奏・録音

代表的な歌唱として、ミスティンゲット(仏語版)、ファニー・ブライス(英語版)、1937年のビリー・ホリデイの録音が特筆される。さらに、1968年の映画『ファニー・ガール』でバーブラ・ストライサンドがクライマックスに据え、同曲は彼女の代名詞の一つとなった。これらの名演はテンポ設定やルバートの幅、終結の高揚方法に差異があり、解釈の自由度を明確に示している。のちのヴォーカリストたちにも強い参照点を与えた。

現代における評価と影響

恋に身を焦がす主体の告白という普遍的テーマと、濃密な劇性が高く評価され、ジャズ・ヴォーカルの教材としてもしばしば取り上げられる。バラード解釈の指針となるルバート運用、語りを生かしたフレージング、コーダでの感情の頂点作りなど、実践的な学びが多い。ライブやコンクールの定番であり、シャンソンとジャズの架橋として音楽史的価値も再確認されている。

まとめ

My Manは、モーリス・イヴァンの書法とレビュー文化の熱気が結晶した名曲であり、シャンソンからジャズ・スタンダードへ発展した稀有な成功例である。多言語・多解釈を許容する懐の深さが魅力で、名演の系譜を辿るほど新たな発見がある。今後もヴォーカリストの表現力を試すバラードとして、舞台と録音の両面で歌い継がれていくだろう。