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Neither One of Us
- 作曲: WEATHERLY JIM

Neither One of Us - 楽譜サンプル
Neither One of Us|歌詞の意味と歴史
基本情報
Neither One of Us(正式題名: Neither One of Us (Wants to Be the First to Say Goodbye))は、作曲家・ソングライターのJim Weatherly(ジム・ウェザリー)によるソウル・バラード。1973年、Gladys Knight & the Pipsの歌唱で大ヒットとなり、同名アルバムにも収録された。レーベルはモータウン系で、グループが新レーベルへ移籍する直前期の代表曲として位置づけられる。緻密なストリングスと落ち着いたリズム・セクション、グラディス・ナイトの深いボーカルが融合し、ソウル/ポップ両チャートで広く支持を獲得した。
歌詞のテーマと意味
本作の核心は、関係の終焉が見えていながら、どちらも「別れを切り出す最初の一言」を言えない心理にある。相手を思いやるがゆえに決断を先送りする、愛情と逡巡のせめぎ合いが丁寧に描かれる。主人公は相互の疲弊を自覚しながらも、記憶や情が背中を引き留める。歌詞は直接的な非難を避け、成熟した視点で別れの必然を受け止める点が特徴的。グループのコーラスが内面の独白を支え、ソウルフルなメロディが心情の揺らぎを増幅する。結果として、失恋の「劇的な断絶」ではなく、静かな幕引きの苦さを普遍的な物語として提示している。
歴史的背景
1970年代初頭のソウル・ミュージックは、モータウンの洗練とサザン・ソウルの情感が交差する時期だった。Neither One of Usは、そうした潮流のなかで、ポップな編曲とディープな歌心を併せ持つバラードとして成立している。ウェザリーはカントリー由来の物語性あるソングライティングで知られ、本曲でも簡素な語彙で普遍的な別れの情景を描き出した。Gladys Knight & the Pipsにとってはモータウン最終期を飾る重要曲であり、のちの代表作へとつながる表現的成熟を示す作品でもある。
有名な演奏・映画での使用
もっとも知られるのは、Gladys Knight & the Pipsによるオリジナル・バージョンで、同グループのステージやベスト盤でも定番として扱われている。多くのアーティストによりカバーが行われてきたが、網羅的な代表例の特定は情報不明。映画やドラマでの顕著な使用についても情報不明である。いずれにせよ、ソウル/R&Bの名唱として、ライブ・レパートリーや追悼公演などで取り上げられることが多い。
現代における評価と影響
本作は、関係の終わりを静かに見つめるバラードの模範例として、現在もソウル史の文脈で高評価を得ている。プレイリストやラジオ番組では70年代ソウルの定番曲として頻繁に取り上げられ、感情を過度に煽らない節度ある表現は、現代のR&Bバラードやアダルト・コンテンポラリーにも通じる美学を示す。歌唱面では、主旋律を押し上げるコーラスの役割や、抑制されたダイナミクスの生み出す緊張感が、後続アーティストの編曲手法に影響を与えたといえる。
まとめ
Neither One of Usは、別れの瞬間に漂うためらいと優しさを、過度なドラマ性に依らず描き切ったソウル・バラードの金字塔。ウェザリーの簡潔な筆致と、グラディス・ナイトの深い表現力が、普遍的な感情を永続的な魅力へと昇華させた。オリジナル演奏を軸に、時代や歌い手を超えて響く楽曲として、今なお多くのリスナーに支持され続けている。