Nobody Knows You When You're Down and Out
- 作曲: COX JIMMIE

Nobody Knows You When You're Down and Out - 楽譜サンプル
Nobody Knows You When You're Down and Out|楽曲の特徴と歴史
基本情報
Nobody Knows You When You're Down and Out は、COX JIMMIE(Jimmy Cox)作による1923年の楽曲。歌詞を持つブルース/ジャズ・スタンダードとして広く親しまれ、富と人間関係のはかなさを主題にした内容で知られる。代表的な録音は1929年のBessie Smithによるヴォーカル版で、以後、数多くのアーティストに取り上げられてきた。演奏調やテンポは解釈により幅があり、定まった公式キーや拍子情報は情報不明。クラブや小編成のジャズ/ブルース・シーンからロックのステージまで、時代やジャンルを超えて演奏され続けている。
音楽的特徴と演奏スタイル
本曲は定型の12小節ブルースから外れた構成を持つ点が大きな特徴。循環進行やセカンダリー・ドミナントを生かした和声の推移、下降するベース・ラインを感じさせるフレーズなど、歌と伴奏のコントラストが映える。テンポはミディアムからスローに設定されることが多く、ヴォーカルの間合い、ブルーノートのニュアンス、ダイナミクスの起伏が表情を決定づける。編成はピアノと歌のデュオ、ギター主体の小コンボ、ホーンを加えたジャズ寄りのアレンジなど多彩で、各スタイルでコードの張り替えやターンアラウンドの扱いが微妙に異なるのも聴きどころである。
歴史的背景
1920年代のアメリカは都市化と禁酒法時代の只中にあり、音楽産業とナイトライフが急速に拡大していた。そうした時代に生まれた本曲は、1929年のBessie Smithの録音が決定的な浸透の契機となる。楽曲に描かれる栄枯盛衰のテーマは、同年の株価暴落を挟む社会情勢とも相まって多くの聴衆の実感に響き、ブルースの枠を超えた普遍性を帯びた。その後もジャズ、ブルース、ロックの演者に受け継がれ、歌詞が持つ物語性と、柔軟なハーモニー設計が再解釈を呼び込み、スタンダード曲としての地位を確立していく。
有名な演奏・録音
もっともよく知られるのはBessie Smithの1929年録音で、ドラマ性と説得力ある歌唱で後続に大きな影響を与えた。ロック寄りの代表例としてはDerek and the Dominos(1970年『Layla and Other Assorted Love Songs』収録)があり、エリック・クラプトンは1992年のMTV Unpluggedでも取り上げ、アコースティックな解釈で楽曲の魅力を新世代に伝えた。ジャズ・ヴォーカルではNina Simone(1965年『Pastel Blues』)の重厚な表現も名高い。ほかにも多くのブルース/ジャズ奏者がスタジオ録音とライヴで取り上げ、各人のコード・ヴォイシングやテンポ設定が個性を際立たせている。
現代における評価と影響
本曲はブルースとジャズの橋渡しとなる教材曲としてもしばしば用いられ、12小節型に依存しない構成や和声運用を学ぶ好例とされる。歌詞のテーマは景気変動や社会不安の局面でしばしば引用され、今日的な意味を持って受け止められている。ストリーミング時代には過去の名録音の再評価が進む一方、新鋭アーティストによるカバーやセッション動画も増え、世代を超えてスタンダードとしての生命力を保っている。
まとめ
Nobody Knows You When You're Down and Out は、時代を超えて歌い継がれるブルース/ジャズ・スタンダード。豊かな和声、語り口の深さ、アレンジ自在性が重なり、名演を生み続ける土壌となっている。