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Stolen Moments

  • 作曲: NELSON OLIVER E
#スタンダードジャズ
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Stolen Moments - 楽譜サンプル

Stolen Moments|楽曲の特徴と歴史

基本情報

「Stolen Moments」はサックス奏者・作曲家オリヴァー・ネルソン(作曲者表記: NELSON OLIVER E)によるジャズ曲。初出は1961年、アルバム『The Blues and the Abstract Truth』(Impulse!)で、ネルソンの代表作として広く知られる。元来はインストゥルメンタルで、後年に歌詞が付された版も存在するが、本作の核は緻密なアレンジと即興にある。

音楽的特徴と演奏スタイル

マイナー・ブルースを基調にしながら、モーダルな感触と洗練されたホーン・ハーモニーを併せ持つのが特色。冒頭の印象的なテーマはサックスとトランペットが緊密に重なり、内声の動きが陰影を与える。中庸テンポのスウィングで、ソロは旋律性と空間を重視。コード進行は教育現場でも分析対象となり、アドリブの導入教材としても定番だ。編曲面ではコール&レスポンスや対位法的処理が巧みで、各パートの受け渡しが自然に流れる。

歴史的背景

1960年代初頭のポスト・バップ期に登場し、ハード・バップの力強さと室内楽的な配慮を架橋する作品として受容された。ネルソンは作編曲の両面で力量を示し、ビッグバンド/小編成を問わず機能する普遍的なフォーマットを確立。録音当時のジャズ界における作編曲家の役割を拡張し、以後のコンポーザー・アレンジャー型の指針となった。

有名な演奏・録音

初演盤ではフレディ・ハバード、エリック・ドルフィー、ビル・エヴァンスらの参加が作品の魅力を一段と高めた。その後も多数のミュージシャンが取り上げ、コンボから大編成までレパートリー化。後年には歌詞付きのヴォーカル版も制作・録音され、ジャズ・クラブや教育機関の演奏会で頻出する定番曲となった。映画やテレビでの具体的使用例は情報不明だが、録音カタログの充実は本作の普遍性を物語る。

現代における評価と影響

今日ではジャズ・スタンダードとして確固たる地位を占め、ジャム・セッションの常連曲。ホーン・セクションの重ね方、内声進行、ソロへの受け渡しはアレンジ学習の格好の素材で、多数の新版スコアや教材に採録されている。マイナー志向の抒情性と理知的構築の両立は、現代ジャズ作編曲の模範例として引用されることが多い。

まとめ

「Stolen Moments」は、耳に残る旋律と理知的な書法を兼ね備えた名曲であり、演奏者には表現の幅、聴き手には奥行きを提供する。初演から半世紀以上を経ても色褪せず、ジャズの文脈で“学び”と“楽しさ”を同時に体現する稀有なレパートリーとして生き続けている。