Up Jumped Spring
- 作曲: HUBBARD FREDDIE

Up Jumped Spring - 楽譜サンプル
Up Jumped Spring|楽曲の特徴と歴史
基本情報
Up Jumped Spring は、トランペッターのフレディ・ハバードが作曲したジャズ・ナンバー。1960年代後半に発表され、現在ではセッションでも頻繁に取り上げられるスタンダードとして親しまれている。原曲はインストゥルメンタルで、タイトルが示す通り「春」が跳ねるような明るさと抒情性を併せ持つ。一部で歌唱版も耳にするが、公的な作詞者や初出歌詞については情報不明である。
音楽的特徴と演奏スタイル
最大の特徴は3/4拍子のワルツ・フィール。軽やかなアウフタクトと跳躍を生かした主題が印象的で、トランペットはもちろんサックスやピアノでも旋律の美しさが際立つ。ハーモニーはポスト・バップ的な機能和声を基調とし、II–V進行を軸にしたスムーズな転回がソロの展開を後押しする。テンポはミディアム前後で演奏されることが多く、リズム・セクションは3拍の推進力とシンコペーションを織り交ぜて揺らぎを作る。イントロやエンディングでは、主題の断片を用いたルバートやフェルマータで余韻を作るアレンジも定番だ。
歴史的背景
ハード・バップからモーダル、ソウル・ジャズまで自在に横断したハバードは、作曲家としても旋律美に富む作品を多く残した。本曲はその代表例のひとつで、アルバム『Backlash』期のレパートリーとして広く知られるようになった。エネルギッシュなブローと叙情的メロディの共存は、60年代後半のジャズが持つ開放感を象徴している。
有名な演奏・録音
フレディ・ハバード自身の録音が参照点となり、その後は多くのトランペッター、サックス奏者、ピアノ・トリオが取り上げてきた。ライブ盤でも採用例が多く、ステージでは季節感のある選曲として春先のセットに組み込まれることもしばしば。セッション現場では、テーマ合奏のダイナミクスとソロのコントラストを学ぶ題材として重宝されている。具体的な決定版は演者や編成で好みが分かれるが、いずれもワルツの浮遊感をどう表現するかが聴きどころだ。
現代における評価と影響
教育現場では、3/4拍子におけるスウィング・フィールの習得や、リリカルなフレージングの練習曲として評価が高い。また、過度に複雑すぎない和声進行と覚えやすい旋律線は、即興の入口から表現力の探求まで幅広いレベルに対応する。配信時代になってもプレイリストや動画でのカバーが増え続け、世代を超えて受け継がれる“春の定番曲”として地位を保っている。
まとめ
Up Jumped Spring は、シンプルな美しさと演奏の自由度を両立させたジャズ・スタンダード。ワルツの心地よい浮力に身を委ねながら、季節の輝きとともに何度でも新鮮に響く一曲だ。