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Once upon a Time

  • 作曲: STROUSE CHARLES
#洋楽ポップス#スタンダードジャズ
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Once upon a Time - 楽譜サンプル

Once upon a Time|楽曲の特徴と歴史

基本情報

Once upon a Timeは、作曲チャールズ・ストラウス、作詞リー・アダムスによるバラードで、1962年のブロードウェイ・ミュージカル『All American』に初出した。舞台曲でありながら独立した人気を獲得し、現在ではアメリカン・ソングブックを代表する一篇として広く歌われる。歌詞は“かつて”の幸福を回想し、成熟と喪失の感情を静かに描く。

音楽的特徴と演奏スタイル

ゆったりしたテンポと息の長い旋律線が核で、レガート主体の歌唱が映える。和声は滑らかな転回と内声の動きが特徴で、ピアノのリハーモナイズや弦・ホーンの柔らかなパッドが情緒を支える。ルバートの自由なイントロから始め、後半で脈打つスロー・スウィングへ移る解釈も一般的。語り口の節度、弱声のコントロール、長いフレーズのブレス設計が肝要となる。

歴史的背景

『All American』は短期間の上演で幕を閉じたが、この曲は早くからコンサートやレコードで独自の生命を得た。前作『バイ・バイ・バーディー』で成功したストラウス=アダムスの持ち味である、記憶に残る旋律と端正な言葉運びが結実し、ショー・チューンがジャズ/ポピュラーの現場へ流入する流れを後押しした。

有名な演奏・録音

1960年代以降、トニー・ベネット、フランク・シナトラ、アンディ・ウィリアムス、ボビー・ダリンらが名唱を残し、スタンダードとしての地位を確立。アレンジはピアノ・トリオの簡素な伴奏からフル・オーケストラまで幅広い。エンディングをフェルマータで静かに閉じる版、間奏に短い器楽ソロを配する版など、解釈の自由度が高い点も魅力である。

現代における評価と影響

誇張を避けた気品ある哀感が評価され、ジャズ・クラブやコンサートのバラード枠で定番化。年齢や声質を問わず取り組めるため、リサイタル・レパートリーや録音曲目として選ばれ続けている。失われた時間を見つめる普遍的な主題は、世代を超えて共感を呼び、今日も新たな解釈を生んでいる。

まとめ

Once upon a Timeは、ブロードウェイ発の楽曲が長寿のスタンダードへ昇華した好例である。繊細な旋律、豊かな和声、節度ある感傷という三要素が、歌手と演奏家に高度な表現の余地を与え、時代を超えて価値を保ち続ける。作品の出自や背景を知ることで、演奏や鑑賞の解像度も一段と高まるだろう。