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Precious Lord, Take My Hand

  • 作曲: DORSEY THOMAS A
#洋楽ポップス
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Precious Lord, Take My Hand - 楽譜サンプル

Precious Lord, Take My Hand|歌詞の意味と歴史

基本情報

「Precious Lord, Take My Hand」は、作曲家トーマス・A・ドーシー(DORSEY THOMAS A)によるゴスペル曲。原題は同名で、しばしば「Take My Hand, Precious Lord」とも表記される。作詞・作曲はドーシー自身、発表は一般に1932年とされる。英語詞の賛美歌で、教会礼拝から公的追悼式、コンサートまで幅広く歌われるスタンダードだ。祈りと慰めを核にした旋律と言葉の結びつきが強く、多くの編曲版や合唱・独唱版が存在する。

歌詞のテーマと意味

主題は、困難や喪失の只中で神の導きと支えを求める切実な祈り。弱さを率直に告白し、暗闇から光へと導かれることへの信頼が語られる。反復される呼びかけと上行する旋律が、嘆きから希望へ移ろう心の動きを音楽的に補強。個人の嘆願でありながら、共同体が唱和できる普遍性を備え、弔い・連帯・再起というテーマを重層的に響かせる。

歴史的背景

ドーシーはブルースと聖歌を架橋した「ゴスペルの父」と称される。彼は私的な深い喪失を経て本作を生み、教会音楽にソウルフルな和声と言葉の身体性を導入した。旋律は伝統賛美歌「Maitland」の系譜に連なる素材をもとに、ゴスペル・ブルースの語法で再構成されたとされる。シカゴの黒人教会を起点に広まり、やがて全米の讃美歌集に定着した。

有名な演奏・映画での使用

マヘリア・ジャクソンは代表的歌い手で、公民権運動の集会や1968年のキング牧師の葬儀でも歌われた記録がある。アレサ・フランクリンは10代の頃から本曲をレパートリーとし、後年のライヴでも重要曲として扱った。エルヴィス・プレスリーも録音を残し、ポピュラー領域へ浸透。映画では『セルマ』(2014)で劇中に用いられ、グラミーではビヨンセが関連パフォーマンスを披露するなど、世代とジャンルを越えて歌い継がれている。

現代における評価と影響

本作は追悼・祈りの場での定番曲として国際的に歌われ、ゴスペル教育や合唱のレパートリーとしても必修に近い位置を占める。個人の悲嘆を共同体の希望へ昇華する構造は、ブラック・チャーチの伝統を象徴しつつ、宗派を超えて受容される普遍性を獲得。録音・配信の時代でも再演が途切れず、ポップスやジャズの表現にも大きな影響を与え続けている。

まとめ

祈り、慰め、連帯という核を持つ本曲は、教会と大衆音楽をつなぐ橋梁的作品。歴史と名唱が蓄積した深みは現在も色褪せず、悲しみの只中に希望を見いだすための歌として響き続けている。