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What Is This Thing Called Love?

  • 作曲: PORTER COLE
#スイング#スタンダードジャズ
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What Is This Thing Called Love? - 楽譜サンプル

What Is This Thing Called Love?|楽曲の特徴と歴史

基本情報

What Is This Thing Called Love? は、作曲・作詞ともにコール・ポーター(Cole Porter)による楽曲で、1929年のレビュー・ミュージカル『Wake Up and Dream』で初披露された。形式はジャズで頻用されるAABAの32小節。原調は固定されず演奏家により異なるが、短調(マイナー)起点で演奏されることが多い。鋭い言葉遊びと洗練された旋律によって、ブロードウェイ発の楽曲ながらジャズ・レパートリーの中心に定着し、歌唱・インスト双方で取り上げられるスタンダードである。

音楽的特徴と演奏スタイル

Aセクションは短調のトニックを基盤に、半音階的な動きと副次ドミナントが織り込まれた和声が魅力。B(ブリッジ)では循環的な転調感が現れ、ビバップ以降のアドリブ語彙に適した進行となる。テンポはミディアム〜アップでのスウィングが定番だが、歌物ではバラードも多い。トライトーン・サブスティテューションや裏コードの置換、転調を交えたリハーモナイズが頻出し、ベースのウォーキングとドラムのシンコペーションが緊張感を支える。インストではソロ・コーラスを重ね、ヴォーカルではコーラス間にスキャットやショート・ソロを挟むスタイルが一般的だ。

歴史的背景

1929年、ロンドンを中心に上演された『Wake Up and Dream』で発表。ポーター特有の機知に富む歌詞と都会的なメロディは当時から評価が高く、スウィング時代を経て、1940年代のビバップ期には和声進行の優秀さが再発見された。舞台発のポピュラー・ソングがジャズの即興言語へと接続される典型例であり、ショー・チューンとジャズの橋渡しを象徴する存在として扱われてきた。

有名な演奏・録音

ヴォーカルでは、エラ・フィッツジェラルドが『Cole Porter Song Book』で上品かつ明瞭な解釈を示し、スタンダードとしての地位を決定づけた。ピアノではアート・テイタムが目眩く再ハーモナイズと超絶技巧で再定義。さらに、タッド・ダメロン作『Hot House』は本曲のコード進行に基づくコントラファクトとして知られ、チャーリー・パーカーやディジー・ガレスピーらの演奏を通じて進行自体がビバップの教科書となった。現在も多数の歌手・インスト奏者が録音し、スタンダード集やレパートリー本に広く掲載されている。

現代における評価と影響

本曲は、マイナー基調で起伏に富む和声と明快なAABA構造により、音大・ジャズ教育の現場でも頻用される教材となっている。ジャム・セッションではアップテンポでのアドリブ巧拙が露わになり、ライン構築やリハーモのセンスが試される。コントラファクトの素材としても強固で、作編曲家にとっては和声デザインの参照点。舞台曲がジャズ語法の進化を促した好例として、今日まで評価は揺るがない。

まとめ

What Is This Thing Called Love? は、1929年初出のショー・チューンでありながら、洗練された歌詞と知的な和声設計によってジャズ・スタンダードの王道に位置づく。名演の蓄積と『Hot House』への展開が示すとおり、演奏・研究の両面で価値が高い一曲である。歌詞全文の引用は避けつつ、テーマ理解と進行分析を軸に聴き比べれば、本曲の魅力は一層明瞭に浮かび上がるだろう。