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Yes Or No

  • 作曲: SHORTER WAYNE
#スタンダードジャズ
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Yes Or No - 楽譜サンプル

Yes Or No|楽曲の特徴と歴史

基本情報

「Yes Or No」はサックス奏者ウェイン・ショーター作曲のジャズ曲。初出はBlue Noteレーベルのアルバム『JuJu』(1965)に収録され、録音は1964年ヴァン・ゲルダー・スタジオで行われた。参加メンバーはショーター(ts)、マッコイ・タイナー(p)、レジー・ワークマン(b)、エルヴィン・ジョーンズ(ds)。インストゥルメンタル作品で、公式な歌詞および作詞者は情報不明。現在ではライブやセッションのレパートリーとして広く扱われる。

音楽的特徴と演奏スタイル

快活なテンポの4ビートを基盤に、エルヴィン・ジョーンズの三連系ポリリズムが推進力を生む。マッコイ・タイナーは4度堆積のヴォイシングでモーダルな浮遊感を作り、主題は短い動機の反復と音域のジャンプによって緊張と弾力を両立。和声は機能的な解決に回収されにくく、半音階的接続や音度の曖昧さが即興の自由度を高める。ソロではモード手法とアウト寄りのラインが交錯し、各奏者のタイム感と相互反応が聴きどころとなる。

歴史的背景

録音当時のショーターはマイルス・デイヴィス第二期クインテット加入直後で、作曲と即興の新しい接点を模索していた。一方で『JuJu』ではコルトレーン人脈のリズム隊を起用し、ハードバップからモードへの橋渡しとなる語法を提示。本曲もその探究の只中に位置し、明確な機能和声に依存しない進行や、リズム・セクションの推進力に即興の重心を置く設計が、60年代中盤の最先端志向を体現している。

有名な演奏・録音

基準となるのはアルバム『JuJu』収録のオリジナル・テイクで、ショーター、タイナー、ワークマン、ジョーンズの緊密な相互作用が作品理解のリファレンスとなる。その後も多くのミュージシャンがライブやセッションで取り上げているが、決定的なカバーとして広く合意された特定盤は情報不明。再発やリマスター音源により、オリジナル録音の解像度は高い状態で入手可能だ。

現代における評価と影響

曖昧さを孕む和声設計と強靭なリズム運用は、現代ジャズの語彙形成に大きな影響を与えた。プロ・学生を問わずレパートリー入りすることが多く、アドリブではハーモニック・リズムの捉え方、スケール選択、アウトとインの行き来などが重要な課題となる。作曲面でも、短い動機から大局的な形を描く方法論は研究対象として価値が高い。

まとめ

Yes Or Noは、ショーターの作曲美学と60年代中盤の革新精神を凝縮した重要曲。原典録音を軸に、リズムと和声の相互作用、動機の展開、即興のダイナミクスに耳を澄ますことで、曲の本質が立ち上がる。ジャズ標準曲として、聴取・演奏・分析のいずれにも耐える懐の深さを備える。