アーティスト情報なし
You Stepped Out Of A Dream
- 作曲: BROWN NACIO HERB

You Stepped Out Of A Dream - 楽譜サンプル
You Stepped Out Of A Dream|楽曲の特徴と歴史
基本情報
You Stepped Out Of A Dream は作曲家 Nacio Herb Brown(ナシオ・ハーブ・ブラウン)による楽曲で、作詞はGus Kahn。1941年公開のMGM映画『Ziegfeld Girl(ジーグフェルド・ガール)』でトニー・マーティンが歌唱し広く知られるようになった。以降はジャズ界で定番として取り上げられ、ボーカル曲としての魅力と、インストゥルメンタルでも映える旋律を併せ持つスタンダードとして定着している。
音楽的特徴と演奏スタイル
歌唱用に書かれた明快で流麗なメロディが最大の魅力。コード進行はジャズの即興にも適しており、テンポはバラードからミディアム・スウィングまで幅広く選択される。ボーカルではロマンティックなイメージを活かしたフレージングが重視され、インストではテナーサックスやトランペットが旋律の跳躍と滑らかなラインを対比的に扱い、アドリブで和声の色合いを丁寧に描く演奏が好まれる。
歴史的背景
ブラウンはハリウッド黄金期を代表する映画音楽作曲家の一人で、カーンはティン・パン・アレーの名作詞家として多くのスタンダードを遺した。本曲は豪華絢爛なレビュー映画『Ziegfeld Girl』の文脈で生まれ、劇中でラナ・ターナーの印象的な登場シーンと結びついたことでも記憶される。映画公開を機にポピュラー界で浸透し、戦後のジャズ・ブームの中でセッション曲としても支持を集めていった。
有名な演奏・録音
初出としては、映画『Ziegfeld Girl』(1941年)でのトニー・マーティンの歌唱が代表的。ジャズではサックス奏者Dexter Gordonがアルバム『A Swingin’ Affair』(1962年)で取り上げ、力強いテナーによる解釈で広く参照される演奏の一つとなった。ほかにも多数のジャズ・ボーカリストやピアニスト、コンボ編成で録音が残され、スタンダードとしての普遍性を裏付けている。
現代における評価と影響
今日でもレパートリーとしての定着度は高く、ジャム・セッションやステージの雰囲気作りに適した楽曲として選ばれることが多い。歌唱では言葉の乗せやすさと情景喚起力が評価され、インストではメロディの輪郭が即興を導く教材的価値も認められている。映画音楽とジャズの橋渡しを象徴する一曲として、往年のハリウッド・ソングの魅力を現在に伝えている。
まとめ
映画発のポピュラー曲として誕生し、ジャズ・スタンダードへと定着した稀有な例が You Stepped Out Of A Dream である。旋律美、歌詞のロマンティシズム、即興への適性という三要素が高い次元で融合し、時代や編成を超えて演奏され続けている。初出の映画文脈を踏まえつつ、今日の演奏現場でも生きる多面的な魅力こそが、この曲の長寿の理由と言える。