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Say It Isn't So
- 作曲: BERLIN IRVING

Say It Isn't So - 楽譜サンプル
Say It Isn't So|楽曲の特徴と歴史
基本情報
「Say It Isn't So」は、アーヴィング・バーリン(Irving Berlin)が1932年に発表したポピュラー・ソングで、現在はジャズ・スタンダードとして親しまれています。作曲だけでなく作詞もバーリン自身によるもの。発表当時から複数のダンス・バンドと歌手に取り上げられ、ラジオやレコードを通じて広く知られる存在となりました。英語歌詞のバラードとして位置づけられ、恋愛の不安や否定しがたい事実を前にした切実な思いをテーマにしています。単独曲として普及し、後年のシンガーやコンボの定番レパートリーへと定着しました。
音楽的特徴と演奏スタイル
本曲は穏やかで流麗な旋律線が特徴で、フレーズの余韻を活かしたレガート唱法が映える楽曲です。多くの歌手がスローからミディアム・スローのテンポで取り上げ、言葉のニュアンスを際立たせるためにルバート(テンポの伸縮)やダイナミクスの対比を用います。ジャズの現場では、シンプルな伴奏で歌詞の情感を際立たせるトリオ編成から、サクソフォンやトランペットが間奏で旋律を引き継ぐスウィング的アプローチまで幅広いアレンジが見られます。和声は版や編曲者により差異があるものの、内声の動きと終止の緊張緩和が感情表現を支え、歌詞の“否定したい真実”というテーマを音楽的にも補強します。
歴史的背景
1930年代初頭のアメリカはラジオ放送とダンス・バンド文化が隆盛し、優れた新曲が瞬く間に全国へ広がる時代でした。「Say It Isn't So」もその波に乗り、出版直後から数多くの楽団と歌手に採用され人気を獲得します。楽譜出版とレコードが相互に相乗効果を生み、バーリンが築いたメロディ・メーカーとしての評価をさらに高める結果となりました。この曲が特定の映画や舞台のために書かれたかどうかは情報不明ですが、当時のポピュラー・ソングの文脈において、単独曲として広く流通しスタンダード化していった代表例といえます。
有名な演奏・録音
初期の代表的な録音としては、George Olsen and His Orchestra、Rudy Vallée、Ozzie Nelsonらの1932年前後のヴァージョンが知られ、歌ものではConnee Boswellの解釈も人気を博しました。以後、多くのボーカリストとスモール・コンボがレパートリーに加え、クラブやコンサートで歌い継がれてきました。録音はバンド編成からピアノ伴奏の親密なデュオまで幅広く、歌手の個性や編曲方針によって、嘆願のような弱音の美学から力強い感情表出まで、多彩な表現が提示されています。
現代における評価と影響
「Say It Isn't So」は、いわゆるグレイト・アメリカン・ソングブックの一角を占め、スタンダード曲集でも取り上げられる機会が多い楽曲です。ジャズ教育やワークショップの場でも、言葉と旋律の統合的表現、ブレス運用、間(ま)の扱いを学ぶ素材として有用視されています。新録音のペースは時代により上下するものの、歌詞の普遍性とメロディの親和性から、世代やジャンルを超えて再解釈が続いており、バラードの語り口を磨くためのリファレンスとして、現在も価値を保ち続けています。
まとめ
アーヴィング・バーリンの「Say It Isn't So」は、端正な旋律と切実なテーマが融合した名バラードで、1930年代の流行歌からジャズ・スタンダードへと定着した代表作のひとつです。編成を問わず魅力が活きるため、シンガーにもインスト奏者にも開かれたレパートリーとして息長く演奏されています。初めて取り組む場合は、テンポを抑え言葉の意味を明瞭に届けること、フレージングとダイナミクスの緩急を意識することが効果的でしょう。歴史と実践を踏まえた一曲として、今後も再評価が続くはずです。