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Small World
- 作曲: STYNE JULE

Small World - 楽譜サンプル
Small World|歌詞の意味と歴史
基本情報
「Small World」は、ジュール・スタイン作曲、スティーヴン・ソンドハイム作詞によるブロードウェイ・ミュージカル『ジプシー』(1959年初演)の楽曲。物語ではステージママのローズが、旅回りの興行師ヘルビーを口説き、行動を共にする契機となる場面で歌われる。オリジナル・ブロードウェイ版のローズはエセル・マーマンが務め、この曲も彼女とジャック・クラグマンによって紹介された。舞台の重要な転換点を担う、抒情性と説得力を併せ持つナンバーである。
歌詞のテーマと意味
タイトルが示す「世間は狭い」という言い回しを軸に、偶然の出会いを運命へと読み替える巧みな語り口が特徴。柔らかな旋律で相手との距離を縮めつつ、次第に相手を引き込む主体性が現れ、ローズの強い意思と野心がにじむ。歌詞は直接的な愛の告白に終始せず、現実的な利点と相性の良さを理路整然と積み上げるため、関係性の駆け引きと現実志向のロマンスが同居する点が魅力である。具体的な歌詞の引用は省くが、言葉遊びと反復が印象的で、記憶に残るフレーズ構成が物語の推進力を生む。
歴史的背景
1950年代末、スタインは『ベルズ・アー・リンギング』などで評価を確立し、ソンドハイムは作詞家として躍進期にあった。『ジプシー』はヴォードヴィル衰退期を描く伝記的ミュージカルで、本曲は作品全体の現実味と人間臭さを補強する。スター誕生の華やかさだけでなく、利害や戦略が交錯する裏側を照らす位置づけにあり、初演以来、再演のたびに核となる楽曲として継承されている。
有名な演奏・映画での使用
1959年のオリジナル・キャスト録音は基準盤として広く参照される。1962年の映画版『ジプシー』、1993年のTV映画版でも楽曲は用いられ、舞台同様に物語上の機能を保った形で映像化された。舞台外では、ジョニー・マティスによる1959年のシングル録音が知られ、ショー・チューンとしての普遍性を示している。
現代における評価と影響
現在もコンサートやミュージカル・リサイタルの定番曲として扱われ、ローズの人物像を立体化する教材的価値を持つ。ソンドハイムの初期作詞の完成度、スタインのメロディメーカーとしての才を示す例として、研究や上演現場での評価は揺るがない。物語の文脈を離れても、対話的で説得力のあるラブソングとして機能する点が、時代を超えて選曲され続ける理由となっている。
まとめ
「Small World」は、親しみやすい旋律と計算された語りが融合し、登場人物の関係を大きく動かす一曲である。『ジプシー』の文脈を知ることで、説得の歌に潜む野心と現実主義のニュアンスがより豊かに味わえる。ブロードウェイ黄金期の作法を学ぶうえでも外せない、ショー・チューンの佳品だ。