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There's A Place
- 作曲: LENNON JOHN WINSTON, MCCARTNEY PAUL JAMES

There's A Place - 楽譜サンプル
「There's A Place|歌詞の意味と歴史」
基本情報
「There's A Place」は、レノン=マッカートニー名義による初期ビートルズの楽曲で、1963年発表の英国デビュー・アルバム「Please Please Me」に収録。作曲はLENNON JOHN WINSTON, MCCARTNEY PAUL JAMES、歌詞も同コンビ。プロデュースはジョージ・マーティン。ロンドンのEMIスタジオ(現アビイ・ロード・スタジオ)で録音され、ヴォーカルを中心にしたシンプルな編成と軽快なテンポが特徴のポップ・ナンバーである。
歌詞のテーマと意味
楽曲の語り手は「行けば悲しみが消える場所」を心の内側に見いだす。物理的な場所ではなく、記憶や想像の領域に恋人の面影を呼び込み、孤独や不安を和らげるという主題が軸だ。初期のダンス・ナンバーの枠内にありながら、自己の内面へ退避する視点はきわめて内省的で、後年の彼らの成熟したソングライティングを先取りする。繰り返しのフレーズとコーラスの緊密な掛け合いが、その「心の避難所」の切実さを強調する。
歴史的背景
1963年初頭、英国で急速に支持を拡大していたビートルズは、短期間のセッションでアルバム全体を録音。本曲もその流れの中で制作され、バンドの実演力をほぼそのまま刻み取った。ロックンロールの高揚感に、米R&Bやブリル・ビルディング系のポップ感覚を吸収したサウンドは、マージービートの代表的色彩を帯びる。米国では翌年のリリース作品に収められ、国際的な知名度の拡大に寄与した。
有名な演奏・映画での使用
決定版はビートルズ自身のスタジオ録音で、当時のライヴ感を保ったバランスの良さが評価される。後年のコンピレーション再発で再注目され、ファンの間ではアルバム中盤の隠れた名曲として語られることが多い。一方、特定の映画やドラマでの顕著な使用、また広く知られたカバーの代表例については情報不明。
現代における評価と影響
本曲は、恋愛歌に内面世界の描写を持ち込むという点で、ビートルズの表現領域を早い段階から拡張した事例としてしばしば取り上げられる。派手なヒット曲に比べて地味ながら、メロディとコーラスの緊密さ、短い尺で完結する構成美が研究対象となり、後続の英ポップ/ロックにおける「内省的ポップ」の源流の一つと評価されている。批評面でも、デビュー期の多彩さを示す重要トラックとして位置づけられる。
まとめ
「There's A Place」は、初期ビートルズの勢いと内省性が同居する稀有な一曲だ。キャッチーなポップ性の裏に、心の避難所という普遍的テーマを忍ばせ、短い時間で確かな余韻を残す。アルバム『Please Please Me』を聴き通す際は、ヒット曲の合間に配されたこの曲の役割と、作家性の早熟さに注目したい。