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Devil In Her Heart
- 作曲: DRAPKIN RICHARD

Devil In Her Heart - 楽譜サンプル
Devil In Her Heart|歌詞の意味と歴史
基本情報
Richard P. Drapkin(クレジット表記:R. Drapkin/Ricky Dee)による楽曲。初出は米ガールグループ、ドネイズが1962年に発表したシングル「Devil in His Heart」のB面。ビートルズは性別を入れ替えた「Devil In Her Heart」として1963年のセカンド・アルバム『With The Beatles』に収録し、リード・ボーカルはジョージ・ハリスンが担当した。作曲者表記はDRAPKIN RICHARD。原盤のレーベル詳細やチャート成績は情報不明。
歌詞のテーマと意味
街の噂では“彼女は危険だ”と囁かれるが、語り手は恋人への信頼を貫く——という構図が核にある。悪魔という比喩は、欲望や裏切りへの警戒を象徴しつつ、周囲の偏見と当人の内面のギャップを浮かび上がらせる。原曲は“his”だったため、視点転換によりジェンダーの役割が反転し、同じ筋立てでも受け手の印象が微妙に変化する点が興味深い。直接的な説教ではなく、軽快なポップ・フォームで忠誠心と信頼の強さを描いた作品と言える。
歴史的背景
初期60年代の米国ではガールグループやR&Bがチャートを席巻し、デトロイト周辺のインディ・レーベルからも佳曲が次々に生まれた。本作もその一つで、地域発の楽曲が国際的関心を集める契機となった。英国では米R&Bの発掘・カバーが盛んになり、マージービートのバンドがレパートリーに取り込んだ。ビートルズは1963年に本曲を録音し、英米ポップが双方向に影響し合う当時のダイナミズムを体現するトラックとして位置づけられている。
有名な演奏・映画での使用
ドネイズのオリジナル・シングル(1962年)と、ビートルズ『With The Beatles』(1963年)のテイクが最も広く知られる。ビートルズはBBCセッションでも本曲を取り上げ、後年公式音源として公開された演奏がある。ジョージ・ハリスンのリードとコーラス・ワークの絡みはファンの評価が高い。映画やテレビドラマでの顕著な使用例は情報不明。その他アーティストによる網羅的なカバー・リストも情報不明。
現代における評価と影響
アルバムの表題曲ではないものの、初期ビートルズの選曲眼とアレンジ能力を示す好例として再評価が進む。ハリスンの誠実なボーカルと、原曲のガールグループ的情感を保った合唱、軽快なビートが相まって、ポップとR&Bの橋渡しを果たした。結果的に無名に近かった原曲への関心を喚起し、60年代ポップの越境的な受容史を語るうえで欠かせない曲となっている。音楽学的にも、性別視点の変換が受容に与える影響を検証できる題材だ。
まとめ
Devil In Her Heartは、DRAPKIN RICHARDが書いたシンプルなポップ・チューンが、大西洋を越えて新たな息吹を得た象徴例である。噂と信頼という普遍的テーマ、性別の視点転換、原曲とカバーの相互照射が今日でも新鮮さを保つ。権利表記や詳細なデータに一部情報不明な点はあるものの、ガールグループ黎明とブリティッシュ・ロック形成期をつなぐ重要作として、今なお聴く価値が高い。